今年8月、福島市にオープンした小さなビアスタンド。経営するのは、ある別の業種に携わる女性です。彼女の挑戦には福島を元気にしたいという思いが込められています。
「乾杯!」
きれいな琥珀色に、真っ白な泡のクラフトビールと、そのビールを片手に笑顔を見せる人々。ここは、今年8月、JR福島駅近くの文化通りにオープンしたビアスタンド「イエロービアワークス」です。

切り盛りするのは、醸造家の加藤絵美さんです。
イエロービアワークス・加藤絵美さん「ここに出せばきっと色んな方が車とか帰りを気にせずに飲めるんじゃないかなと」

加藤さんは、2年前に福島市の市街地に醸造所を設立。特に県外からの反響が多くありましたが、より県民に親しんでもらうためにと店をオープンさせました。
店では多い日には10種類のビールを楽しむことができ、そのうちの4種類ほどは加藤さんが手がけたクラフトビールです。

お客さん「飲み飽きないです」
Q.よくいらっしゃるんですか「ヘビーユーザーです。ヘビードランカーか」
お客さん「日本酒は日本酒でいいんですけど、日本酒の前にクラフトビールで乾杯」
実は加藤さん、本業は福島市で稲作を営むコメ農家なんです。ビール造りを始めたきっかけは、東日本大震災でした。

加藤さん「福島を盛り上げるために、何か自分にできることはないかとすごく模索していた時があって」
その「何か」を見つけるため、当時加藤さんは「おもしろい人がいる」と聞くと、日本全国どこにでも会いに行く旅を繰り返していました。
加藤さん「旅の途中で出会ったクラフトビールがすごくおいしかったんですよ。私の概念を覆すような香りが豊かでおいしいなと思えるビールに出会って、そこからクラフトビールが気になって」
コメとは全く別のビールを作り始めるとは、かねてからのビール党なのかと思いきや・・・
加藤さん「もともとビールがあまり得意ではなかったので、比較的ビールが苦手な方でも飲みやすいなと思えるようなビールを作りたいなと思っています」
『ビールが苦手な人でもおいしく飲めるビール』。
なかにはこんな変わり種も。名前は「パープルプライド」です。

松井綾乃アナウンサー「ブルーベリーの果実酒みたい。チーズとかのおつまみと合わせたくなるかもしれない。おいしい」

ブルーベリーをたっぷり使っていて飲みやすいことから、特に女性から人気を集めていると言います。
加藤さんがどのようにビール造りをしているのか、醸造所をのぞかせてもらいました。
「ナノブルワリー」と呼ばれるほどの小さな醸造所で、部屋の中には大きめの鍋が2つ。ここで、およそ2週間おきにビールを製造しています。

加藤さん「これはホップですね。ビールの苦みを付けたりとか香りを付けたりとか、大体3種類とか数種類を組み合わせて、色んなビールを作っていきます」
コメ作りはプロでも、ビールは醸造所ができてまだ2年の加藤さん。日々勉強は欠かせません。今でも、全国各地の醸造所に勉強に訪れることもあるといいます。
加藤さん「農業もビールもこれで成功みたいなのがなくて、必ず何か直さなきゃいけないところとかいろいろ見えてくる」
店では、加藤さんが手がけた米を使ったおむすびも提供しています。

ポイントは「にぎらないこと」です。
加藤さん「ふんわりふんわり柔らかく握っているので、逆にお子さんとかだと食べにくさもあるかもしれないですけど」
そうすることで、粒のたったおむすびができるといいます。

おむすびをほおばったお客さんは?
お客さん「一粒一粒に甘さがあってすごいおいしいです」
小さな店内では、初対面の客同士が仲良くなることも。丹精込めて作ったビールとおむすびを片手に楽しむ客たちの姿を見て、加藤さんも笑みがこぼれます。
加藤さんは、このビールをより多くの人に届けるため、来年には醸造所をおよそ10倍の規模に拡大する計画です。

加藤さん「まだまだ私たちは始まったばかりなんですけど、10年20年30年と続くようなビールの醸造所になりたいですし、地元の方にちゃんと愛されるようなビールづくりをしたいと思っています」