仙台市在住の作家、伊集院静さんが11月24日亡くなりました。仙台文学館では伊集院さんの遺作を展示するコーナーが設けられ訪れた人たちから悼む声が聞かれました。

2016年11月のインタビューで、伊集院さんは作品への思いをこう語りました。

伊集院静さん:
「たくさんの人に読まれる作品を書くことができたらうれしいなと思う」

仙台在住の作家、伊集院静さんは1992年に直木賞、2016年には紫綬褒章を受章しました。肝内胆管癌のため11月24日に亡くなりました。73歳でした。

青葉区の仙台文学館では伊集院さんが直木賞を受賞した「受け月(うけづき)」や「乳房(ちぶさ)」などの小説やエッセーを展示する追悼コーナーを設け業績や人柄を偲んでいます。

来館者:
「すごく残念です。もっと読みたかったですね。(文章が)あたたかい感じがしていいなと思いました。憧れる男の人という感じ」

山口県出身で元高校球児の伊集院さんには長年、エールを送ってきた男性がいました。同じ山口出身で3歳年上の元プロ野球選手、池永正明さんです。

伊集院さん:
「パリーグの猛者に向かっていく逃げない投法というのはねえチャレンジ精神旺盛なピッチャーだったと思う。だからみんなに支持されたと思う」

そんな池永さんの人生は、1969年に一変します。いわゆる「黒い霧事件」。暴力団が絡む野球賭博に関わり現金を受け取って八百長行為をしたと疑われました。
池永さんは八百長を否定。球界の調査でも池永さんが絡んだ八百長試合はありませんでしたが永久追放の処分を受けました。

池永さん(当時23歳):
「自分は絶対していないんだ神に誓っても。それで永久追放なら仕方がない」

伊集院さんは池永さんの救済を"ペン"で訴えました。「裁定は永久追放、となった。たんにプロ野球界からの追放のはずなのに、その言葉は社会からの追放のニュアンスがあった。(中略)永久な法を誰が遵守するのか…」

池永さんは去年、亡くなりましたが、生前、処分が解除される見通しとなった際にはお祝いの鉢植えも贈りました。

伊集院さん:
「あれだけ野球を愛している人だから堂々とスタンドに行くなりグラウンドに入るなり、そういう風に生きてほしい」

震災直後には仙台でトークイベントに参加し小説の執筆に関するエピソードなどを語りました。当時、イベントを担当した仙台文学館の伊藤美菜子さんは、伊集院さんとの思い出をこう振り返ります。

仙台文学館 伊藤美菜子さん

仙台文学館 伊藤美菜子さん:
「こんなに早く訃報ということになるとは私たちも思っていませんでした。大変驚きました。とても優しく打ち合わせさせてもらったのが印象に残っている」

伊藤さんは伊集院さんが、仙台の文学界に与えた影響は大きいと話します。

仙台文学館 伊藤美菜子さん:
「すごく若い人にも響くような言葉をたくさん発信されていた先生だと思う。(伊集院さんの後)仙台を拠点にして活動されている作家の方が多くなってきましたので、(伊集院さんが)その流れの一番最初となっている」

また、青葉区のくまざわ書店エスパル仙台店でも伊集院さんの作品を紹介する特設コーナーが設けられています。訪れた人の中には、上司が伊集院さんと懇意にしていたという男性もいました。

上司が伊集院さんと知人の男性:
「ご本人とは直接会った事はないんですけど、そういった関係で、生き方含めて共感するものがあったので。ちょっと早すぎたかな、似たような年代なので」

くまざわ書店エスパル仙台店では、今年いっぱい、特設コーナーを設置するということです。

伊集院さんの死去について妻・篠ひろ子さんは「自由気ままに生きた人生でした。人が好きで、きっと皆様に会いたかったはずですが、強がりを言って誰にも会わずに逝ってしまった主人のわがままをどうかお許しください」などとファンや関係者あてにコメントを発表しました。仙台文学館での追悼展示は、しばらくの間、続けられるということです。