戦前に製造され、戦後復興の歴史とともに昭和を走り抜けた3両の蒸気機関車が、
宮城県大崎市に保存されています。
老朽化にともない市が解体・撤去する方針を示す中、次世代にこの風景を残したいと活動する男性を取材しました。

伊達政宗が12年間、居城を構えた大崎市岩出山。

伊達政宗が城を構えた大崎市岩出山


その城跡に整備された城山公園では、ソメイヨシノやシダレザクラなど、およそ250本のサクラが植えられ、市民の憩いの場として、春には多くの人が訪れます。

城山公園


ひときわ存在感を放つのは、咲き誇るサクラの下の古い蒸気機関車。
C58形という車両の名前から、「シゴハチ」さんという名前で広く愛されてきました。

SL-C58形「シゴハチ」


戦前に製造され、小牛田駅から山形県の新庄駅を結ぶ陸羽東線を走ってきたC58形。

陸羽東線を走る「シゴハチ」


長年の役目を終えたあと、1973年に3両が国鉄から当時の岩出山町などに貸与されました。
当時はSLブームのただなかで、地元の熱烈な歓迎を受け、その1両は城山公園に移されました。

城山公園に移設された「シゴハチ」


それから約50年。長年の雨風にさらされ、塗装ははがれ、車両はボロボロになってしまいました。

車両はボロボロに


老朽化が進んだことから、2020年9月、大崎市は3両すべての解体と撤去の方針を示しました。

住民
「SL保存の協力をお願いしたいんです」

地域の宝を残したい。住民によって、保存を訴える署名活動がおこなわれています。

「こちら昭和14年に作られた蒸気機関車になります。ボロボロなんですけどこの機関車みんなでピカピカにしていきたいなと保存の声を上げてたところでした。磨けばきれいになりますから」

陸羽東線シゴハチ歴史保存会 大場正明さん


保存を訴える陸羽東線シゴハチ歴史保存会の大場正明さん(34)です。

大場正明さん
「はじめて城山公園の機関車を見た時に、嬉しいという気持ちと悲しいという気持ち、ふたつの気持ちがありました。私の両親、祖父母が見てきたものがここに残っているんだという嬉しさ。それと同時に地域で活躍してきた蒸気機関車がこんなにも荒廃してしまったのか、という悲しさです。だいぶショックでしたね」

山形県新庄市出身で、幼いころからSLに魅せられた大場さん。

大崎市が、1両約2000万円をかけてSLを撤去する計画を知り、「陸羽東線シゴハチ歴史保存会」を立ち上げました。

大場正明さん
「歴史あるものをしっかり残せたらどういうことが起こるか。それは当時を知る方々と知らない子どもの世代間交流が生まれるきっかけにもなりますし、家族の人生がどういう歴史をたどってきたのか気付いてくれる糸口になってくれると思います」

保存活動で、大場さんが参考にしたのは、「厚狭の奇跡」と呼ばれる山口県の例でした。

「厚狭の奇跡」


山陽小野田市に保存されていたデゴイチは、劣化がひどく、「おばけ列車」と呼ばれていましたが、地元のボランティアによって、サビが落とされ、塗装し直してきれいな姿を取り戻しました。
かかった費用は約30万円。この成功例が大場さんを後押ししました。

30万円で補修されたデゴイチ


大場正明さん
「私もそんな金額でできてしまうのかということでびっくりしまして、これは大崎市でも絶対できるという風に感じました」

大場さんの話を聞き、長年、岩出山のSLを見てきた地域の人も手を貸します。

住民
「今までこのSLを励みにしてきた私もその一人です。このSLが見てきた昭和という歴史、これは地域の、岩出山の宝だなと思っています」
「かつて日本の戦後の復興を牽引したSL。これを置いていることによって、もう一度高齢の方々ももうひと頑張りするというような気持ちにさせてくれる」
「2000万円かけて撤去するより、ここにあるだけで価値のあるものだと思いますので、保存していった方がいいかと思います」

これまでに、目標を上回る1000人以上の署名が集まりました。
岩出山のシゴハチの解体が最終決定する6月を前に今月中旬に市長宛てに署名を提出する考えです。

大場正明さん
「是非この皆さんの暖かい気持ち、その思いをここに咲く満開の桜のように咲かせたい。そして何度も何度もこの美しい桜のような、美しい機関車として残していきたいなと思っています」

大場正明さん


戦後の復興を支え、多くの人の思いを乗せてきたシゴハチを残したい。そんな思いは届くのでしょうか。