梅雨時期に美しく咲き誇る「タチアオイ」には、古くから伝わる天気の知恵が隠されていました。花が咲く順序に秘められた、先人たちの自然観察の鋭さに驚かされます。
花は上から?下から?「タチアオイ」のクイズ

今野桂吾気象予報士が自宅近くで撮影した「タチアオイ」の写真です。この「タチアオイ」、花は上から咲くでしょうか?下から咲くでしょうか?
佐々木夏音アナ:「難しいですね。ちょっとじゃあ、下からにしてみます」
正解は「下から咲く」!江戸時代からの言い伝え

はい、夏音さん、正解です。下から咲いていきます。
「タチアオイ」には、古くから伝わるこんな句も。
「日につれて咲き登りけり立葵」という句があるんですが、これは「下の方から上の方に咲き登っていく」という意味です。
「タチアオイ」は「梅雨葵」とも呼ばれる梅雨の目印

「タチアオイ」は、梅雨の時期に咲くことから「梅雨葵(つゆあおい)」とも呼ばれています。さらに興味深いことに、江戸時代の「世事百段」という書物には、「タチアオイ」は梅雨入りや梅雨明けの目安なるという記述も。
書物には「花葵(タチアオイのこと)の花咲きそむるを入梅とし だんだん標(すえ)の方に咲き終わるを 梅雨のあくるとしるべし」と記されているそうです。

現代語に訳すと「タチアオイが咲き始める頃を梅雨入り、てっぺんの花が咲く頃を梅雨明けとする」という意味だということです。

昔の人々は自然をよく観察し、季節の変化を植物の様子から読み取っていました。現代の天気予報がない時代に、タチアオイが梅雨の案内役を務めていたという事実に、先人の知恵の深さを感じます。