飛べないはずなのに…

有害生物の駆除などを行う事業所などで組織する「日本ペストコントロール協会」の調査によると、トコジラミに関する相談件数は、2009年130件だったのに対し、2022年は683件と10年あまりで、5倍以上に膨れ上がっています。

そのワケを害虫の駆除や研究などをするフジ環境サービス(静岡市)の田辺堅太郎さんは「2000年前後から海外に頻繁に行く人、来る人といった交流が増えた、さらにコロナ明けで、国内の人の行き来が増えていることが原因」と分析します。また、従来、活動が活発化する夏場ではなく、冬になっても活動が引き続き活発な理由の一つとして、冬でも室内が温かいという住環境がかつてに比べ、格段によくなったことも挙げられるといいます。

トコジラミは、飛べないので長距離を移動することは不可能です。しかし、その代わりに衣服やカバンなどに付着することで気づかぬうちに、自宅に持ち帰ってしまうケースもあるというのです。

さらに繁殖力も強く、1匹で500個程度産卵。血液を吸わなくても半年程度生きるという報告もあり、1匹を駆除してもと安心はできないのです。

「トコジラミの生態を考えた時に、国内外問わず、宿泊施設などは、衣服やカバンなどが汚染されるリスクの高い場所といえる。そこに持ち込んだものは、なるべく気をつけて、家に持ち帰る。持ち帰った後はカバンの中を掃除機で掃除することも、自衛策としていい」(田辺さん)。

そこまで注意をしても、家に持ち込んでしまうことがあります。トコジラミの住み家となるのが、名前の通り、ベッドの周りです。さらにソファーの隅、さらにカーペットの裏、はたまた、カーテンの裏も好むといいます。