2021年、静岡県熱海市で発生した大規模な土石流災害で、静岡県は起点にあった盛り土が業者の届け出通りの高さで造られていれば、盛り土は崩れなかったとする検証結果を報告しました。被災者は「行政がきちんと指導していれば、28人が亡くなることはなかった」と悔しさをにじませました。
<静岡県砂防課 大野正敏班長>
「届け出内容で盛り土が施工されていれば盛り土全体が崩落しなかったと考える」
県は3月29日、このように結論付けました。
2021年7月、28人が死亡した熱海市の土石流災害では、起点にあった盛り土が崩れ、被害が拡大したとされています。盛り土を行った業者が熱海市に提出した書類。高さは規制の範囲内の15mと記載されています。しかし、実際は規制の15mを超えて、50mにまで積み上げられていたことが分かっています。
静岡県は2022年9月、土石流の発生原因について「盛り土に地下水が流入したことが大きな要因になった」と報告するも、違法な高さまで積み上げられた盛り土と崩落との因果関係には踏み込んでおらず、外部の機関に検証を依頼していました。
静岡県は29日、その検証結果を報告。業者の届け出通りに規制条例の15m以下で造成された場合、「盛り土全体の崩落はなかった」という見解を示しました。盛り土の高さを15mにしてシミュレーションを実施した結果、「盛り土への地下水の流入は少なく、急激に土が柔らかくなる現象は起きなかった」と結論付けました。
今回の検証結果を受け、被災者は「熱海市や静岡県は崩れる前になぜ15mで指導できなかったのか」と怒りをあらわにします。
<被災者 太田滋さん>
「これは最初から人災だと思っていて、行政がきちんと指導していれば、28人が亡くならなかったと思ってますし、適切にしていれば崩れなかったというところからすると、お金儲け、それに行政は見過ごしてたということになると共犯じゃないのかなと思う」
母親を亡くした被害者の会・瀬下雄史会長も、盛り土を造った土地所有者らと止められなかった行政の責任を口にしました。
<被害者の会 瀬下雄史会長>
「改めて悔しいと思った。発災直後から違法な盛り土が被害を甚大化させたと伝えられていたが、まさしく違法な盛り土を、前、現土地所有者、熱海市、静岡県まで全員が全員過失があったのだと改めて思う」
SBSは違法な盛り土をまず取り締まる立場にあった熱海市にコメントを求めましたが、回答はありませんでした。
土石流災害の責任追及をめぐっては、警察は土石流の起点となった盛り土の前と現在の土地所有者、そして、熱海市の行政対応に不備がなかったかを捜査しています。
一方、民事裁判では遺族や被災者らが、前と現在の土地所有者と静岡県と熱海市に損害賠償を求める裁判を起こし、責任を明らかにしようとしています。