リニア中央新幹線の南アルプスのトンネル工事で2月21日、JR東海が静岡との県境へ向けた山梨県内のボーリング調査を開始しました。静岡県が求めた合意がなく実施された格好で、静岡県の川勝知事は「本当にけしからん」と怒りをあらわにしました。
<川勝平太知事>
「一方的でしたね。こちらの方から問い合わせたことに対して実質無回答で工事を始めるということになりました」
21日、カメラの前でJR東海を痛烈に批判した川勝知事。JR東海が21日、山梨と静岡の県境へ向けた高速長尺先進ボーリングを県の合意がないまま開始したからです。
このボーリングは元々2月上旬から実施される予定でしたが、静岡県が「県境付近の断層帯に近づくと水圧差で県内の地下水が流出する懸念がある」などと主張。山梨県内の掘削ではあるものの、管理体制などについて静岡県と合意するまで実施しないよう1月に求めていました。
この要請に対し、JR東海の金子社長は…。
<JR東海 金子慎社長>
「山梨県内でボーリングを開始することについて静岡県の合意が必要だとは思っていません。十分離れていて、静岡県内の水資源に影響はないと考えている」
高速長尺先進ボーリングは山梨県内の調査を目的に山梨と静岡の県境の800m手前から県境付近に向けて実施するもので、山梨側に流出する水の戻し方が定まるまで県境は越えません。ただ、県境付近には断層帯がある可能性があり、JR東海は100m手前からは「特に慎重に実施する」としています。
JR東海は県への回答でトンネル湧水対策が必要なケースでも最大30m程度の確保が一般的として「100mは十分に余裕を持った」と強調。100mより先の対応については県と対話する意向を示しました。
<JR東海 金子慎社長>
「山梨県内の相当離れたところからのボーリングなので(静岡県の)心配は心配として受け止めて慎重に進めていく」
JR東海によりますと、ボーリングの開始地点となる山梨県と早川町は「地質と地下水の調査は必要で、ボーリングは進めるべき」と話しています。
一方、川勝知事は21日、「静岡県側の断層帯が山梨県側の断層とつながっている可能性を示したデータが回答文から切り離されている」とJR東海に疑いの目を向けました。
<川勝平太知事>
「水圧で水が抜かれる可能性があるから本当に慎重にならなくちゃいけない。もし(データの切り離しを)分かっていてやっているのなら本当にけしからんこと。我々の抗議を無視して(ボーリングを)するようなので、これは国の出番が来ているかなと思う」
県とJR東海の溝をますます深めつつあるボーリング調査。JR東海は「今回のボーリングとその後の県境を越えるボーリングで静岡県内の地質や湧水の状況を把握し公表することが、大井川流域の懸念の解消につながると考えています」とコメントしています。
ボーリングの開始を受けて、大井川流域の島田市の染谷市長は、JR東海からも県からも事前の説明がなく、突然のことで少し驚いた。ボーリング調査はデータが得られるため、実施すべきという意見は変わっていないので様子を見ていきたいとコメントしました。