静岡県浜松市の病院が今、新生児専用の救急車を更新するため、クラウドファンディングを展開しています。地域でも指折りの総合病院が支援を募るのは、理由がありました。
<古谷耕之輔さん>
「うれしいですね」
<妻・古谷結衣さん>
「生まれてきてくれてありがとう、だよね」
浜松市に住む古谷さん夫妻の息子・椋くん。生まれた直後に、異変が見つかりました。
<結衣さん>
「胎便吸引症候群という状況で陣痛も出産も長引いて低酸素状態になって」
呼吸が、うまくできていないことがわかったといいます。
<耕之輔さん>
「数値的に限界があったので、聖隷に連絡してもらった。サイレンが聞こえて逆に安心した」
病院間の素早い連携により、10日ほどの入院で事なきを得ました。
<結衣さん>
「よかったなの一言。無事に一緒に暮らせるなと思った」
椋くんを救ったのが、聖隷浜松病院の新生児専用救急車です。「走るNICU」と呼ばれています。
取材当日も、生まれたばかりの赤ちゃんが運ばれてきました。車内は一般の救急車よりひと回り広い印象です。
<聖隷浜松病院 NICU 鈴木晴菜看護師>
「こちらは(人工)呼吸器になっていて、酸素とコンプレッサー、空気を送り出す機械を使って管理している」
このほか、体温を保つための保育器や心拍数などを管理するモニターなど、赤ちゃんの命を守るためのさまざまな機材が積まれています。
<鈴木看護師>
「このNBA(新生児専用救急車)では、医師や看護師が同行し、さまざまな機械を使って1分1秒でも早く治療が開始できるというのが『走るNICU』と呼ばれているところ」
この病院では、総合周産期母子医療センターができた48年前(1977年)に新生児専用の救急車を導入しました。現在の車両で5台目。記録が残る1987年以降、8900件以上出動してきました。
この「走るNICU」は、県西部では聖隷浜松病院の1台のみ。1日に何度も出動することもあり、走行距離は14年間で15万キロを超えています。
<聖隷浜松病院 杉浦弘新生児科部長>
「内容は充実しているが、それを動かす電気系統や車そのもののラジエーター、車を動かすため、機械を動かすための部分の故障が相次いでいる」
修理した回数は計41回。2025年に入り出動できなかった日もあったといいます。新しい救急車を導入するには、約7000万円かかります。そこで病院が考えたのがクラウドファンディングでした。
<杉浦部長>
「こういう新生児医療があるんだ、NICUというところがあるんだと広く知っていただきたいという思いで挑戦を始めた。この地域で生まれる赤ちゃんの命を守るためにこの救急車は必要」
新たな命を地域で守りたい、支援の輪は大きく広がろうとしています。
このクラウドファンディングは、スタートから2週間あまりで1500万円を超え、現在は次の目標3500万円を目指しています。
杉浦部長は「応援コメントがとてもうれしくて、それがモチベーションになっている」と話していました。クラウドファンディングは11月28日まで行われます。