2人は、有罪か、それとも無罪か。
■飽津史隆(あくつ・ふみたか)弁護士
「バス事業者の経営陣が業務上過失致死傷罪を問われた事例が過去にない。その点で安全管理をどう考えるのかがなかなか難しい」
元検事の飽津史隆弁護士は、2人に過失があるかどうかが、主な争点だと話します。
「過失」の有無を判断するポイントの一つが、「事故を予見できたかどうか」です。
検察側は、死亡した運転手は採用面接の際に大型バスの運転が苦手であることを伝えていたと主張。
乗務員の点呼や適正診断が適切に行われないなど、ずさんな運行管理が常態化していたと指摘しています。
■飽津史隆弁護士 「さらに、実地の訓練に出させたときに脱輪しそうになったとかがあって運転が不慣れな状態から習熟させるための訓練をきちんと経営陣がさせていないまま漫然と運転業務につかせたという事実は揺るがないと思う」
そして、もう一つのポイントが、事故を回避するための適切な安全管理を2人が怠っていたかどうかです。
■飽津史隆弁護士 「今回特に注目したのが事故の前に国交省の監査を受けて不備を相当指摘されている。直すのかと思ったら直さないで虚偽報告しているという点。きちんと法令に従って業務を遂行していくという姿勢が欠けていたということになればそれはおそらく『過失あり』という方向に傾いていくのではないか」
一方、弁護側は、「運転手の技量は未熟ではなく、ブレーキを踏むという基本的な操作を行わないことまでは予見できなかった」などと主張しています。
また、両被告が事故を予見でき、安全管理を怠っていたとしても、そのことと事故との間に因果関係が認められなければ、2人に刑事責任は問われません。
■飽津史隆弁護士 「直接の行為者ではありませんから、安全管理を怠ったという監督責任と人が亡くなったという結果との間が非常に遠い関係にあります。この因果関係の立証が非常に難しい。安全管理を怠ったから人が亡くなったんだ事故が起きたんだという立証を検察がきちんとできたのか、そこが今回の裁判のポイントになるのだろうと思います」
14回にわたって公判が行われ、2022年12月に結審した、今回の裁判。
今年1月、京都府・舞鶴(まいづる)市で寛さんの墓参りをした田原さんは、判決を前にした心境を語りました。
■田原義則さん
「『今思えば防げたかもしれない』というのを被告も言っている。今思えばなので当時は思っていなかったとも言っているが、絶対そんなことあってはならないことだと思います。再発防止につながるような判決になってほしいと切に願っています」
事故から7年4か月余り。
両被告に事故の責任は問われるのか。
判決は、8日午後2時から長野地方裁判所で言い渡されます。