「夢も希望もないのにね、なんでだらだら生きとんかな」

もう一人、19歳で大島青松園に入所した男性の存在も、伊達さんの心に深く残っているといいます。

(伊達典子さん)
「大島のカリスマでもあった方です。15歳で発病し、19歳で入所されました。医者になりたいという夢があったそうですが、ハンセン病とわかるとこの社会では生きていけないと自覚し、ご自身で大島に来られたとおっしゃっていました。

私がお会いした時、77歳でしたが、『自分の生存そのものに疑問をもつ』とおっしゃったんです。『夢も希望もないのにね、なんでだらだらだらだら毎日毎日生きとんかな』と言われまして。

私はもう、本当に取材どころではなくなってしまい、何を聞いていいかわからず、ただショックで、悲しくて……。高松に帰る船を待つ間、浜辺で2時間くらい涙が止まりませんでした。

この大島の周りの海を、どんな気持ちで70年近く見てきたのだろうと思うと、本当にいたたまれなくなりました。その日から、その入所者の男性の人生を追いかけて番組を作ることになりました」