国からの提案『遊水池計画』に住民は…

思いもよらぬ計画…それは『遊水地計画』です。遊水地は、洪水被害を抑えるために大雨で増水した河川の水をあふれさせてためる場所になります。

長幸さん「本音は今住んでいるところに米を作りながらそのまま住んで」

遊水池にするためには、大柿地区全体を水瓶のように掘り下げる必要があります。つまり、大柿地区が無くなってしまうのです。

長幸さんたち住民の心の整理がつかない中、国は住民説明会で大柿地区の「3分の2を買収したい」と住民に提示しました。

市担当者「住まいについては、地区全体で安全な場所に移転していただき…」

大柿章治さん「住んでる人のことは考えずに『水に浸かったから移転しなさい』そうすると人吉全部移転でしょ。私はここに住みたい。住んでいます」

町内会長の大柿章治(おおかき しょうじ)さんです。

章治さんは20年ほど前から自宅近くで温泉施設と観光農園を営んでいます。しかし豪雨で施設は全壊しました。

章治さん「みなさんに楽しんで頂ければそれが一番」

地区唯一の温泉を復活させることで住民を元気にしたいと、補助金を活用し復旧工事をしていた矢先、遊水地計画が示されました。

章治さん「立ち退いてくれと。わざわざ作ったのに。施設は持っていけないので」

歩みはじめていた再建への道。簡単に諦めることはできません。

温泉施設は今年2月に完成。豪雨被災から3年を迎える今月、オープンを控えています。

章治さん「1人でも住民がいたら(遊水地が)できないということなら『もうできないから止めよう』と言うんですけど。行政や国交省はそのまま(計画)を進めている」

揺れる住民たち。時が経つにつれ、それぞれの思いに変化も…。