7月20日の参議院議員選挙で熊本選挙区(改選数1)は、自民党・現職の馬場成志候補(60)が、新人3人を破って3回目の当選を確実にし、「保守王国」の面目を保ちました。

去年(2024年)の衆院選で、熊本県の自民党は、4つある小選挙区でいずれも野党が擁立した候補の比例復活さえ許しませんでしたが、比例代表で得た県内の自民党の票は、前回(2021年)の32万票から24万票へと約4分の1を失っていて、自民党県連は危機感を抱いていました。

そのため自民党県連は、選挙前から県内45市町村全てで組織する選対支部などに準備を進めるよう求め、馬場候補自身もこまめに地域を回って政策を訴えてきました。

ただ、支援者の間でも根強い「保守王国」のイメージが、逆に「今回も馬場さんは大丈夫」との慢心も招いていました。

いざ選挙戦に入ると立憲新人の鎌田候補との接戦が伝えられ、さらに参議院の予算委員長(後に辞任)で自民党の鶴保庸介参議院議員が、7月8日に和歌山市の集会で演説した際、「運のいいことに能登で地震があった」と述べたことで自民党熊本県連の幹部の緊張はさらに高まりました。

また、小泉進次郎・農林水産大臣が、コメ不足への対応の中で、備蓄米の放出方法を随意契約に変更したことや、主食用の輸入米の前倒しも決めたことで、熊本の農家の若手や中堅からは「与党は、コメの価格が高くなればすぐに消費者に対応するのに、低い時には農家に何もしない」といった不満が顕在化するようになりました。

一方、自民党県連にとっては、立憲の鎌田候補だけでなく、保守的な政策を多く掲げる参政党の山口候補が自民支持層の票を奪っているとの分析もあり、難しい対応が迫られました。

そのため自民党県連が改めて組織を引き締めたほか、馬場さんも選挙期間中の大半を大票田の熊本市以外で遊説する時間に割り当て、政策面でも「自給率の向上」や「農林水産業の成長産業化」に加え、ガソリンの暫定税率の廃止に向けた協議を訴えるなど、保守票のつなぎ止めに力を注ぎました。

その結果、全国的に自民党が議席を減らす中、政権批判を強める他の候補を振り切り、貴重な「1人区」で馬場候補は議席を守ったのです。

陣営関係者は「政治とカネの問題は選挙期間中もくすぶり、少数与党ということもあって石破茂政権の『決められない政治』への有権者の反発に苦しんだが、馬場さんの現職としての知名度や支援団体を固める組織戦を地道に展開したことで何とか勝てた」と胸をなでおろしました。

それでも、物価高などに苦しむ国民の悲鳴が簡単に収まるはずはなく、馬場候補の3期目には、早急に成果をあげることが求められています。