国の一大プロジェクトとしてTSMCの工場が熊本県菊陽町に開所して1年。経済波及効果が期待される一方、周辺地域で問題となっているのが地価高騰です。
地域医療など命の現場への影響を考えます。
(放送日:2月26日)
地価高騰で病院も薬局も撤退

薬局関係者「TSMCの進出が発表された時は私たちも非常に喜ばしいことだと思っていたのですが、まさか自分たちがその影響で撤退することになるとは思ってもみなかった」
こう語るのは、菊陽町の中心、光の森エリアで薬局を運営していた会社の代表です。
20年間、地域医療を支えたいという思いでやってきたと話す代表ですが、去年5月、薬局を閉じる決断をしました。
その理由の1つが、地価の高騰に伴う家賃価格の上昇でした。
薬局関係者「土地の更新時期がきたので、地主に『引き続きこの地区で続けたい』ということで話したが、提示された金額が思っていたよりかなり高騰していた」

不動産会社「アズマシティ開発」によりますと、光の森エリアはもともと人気のある土地で、2020年ごろでも商業用地で最大で坪40万円台でした。この価格がTSMCが菊陽町に進出を表明して以降、さらに上がり、2024年は最大で坪80万円近くまで高騰しているとみられます。
光の森エリアでは1年間でこの薬局のほかに病院2軒が撤退しています。そのうちの1軒に話を聞くと「倍近い家賃が提示された」と言います。
医療機関の撤退に近くに住む人は…。

近くに住む人「(撤退した病院に)以前は通っていた。(撤退は)残念。近くにないなら、どこに行こうかなというのをまず思った」
近くに住む人「発展するのは嬉しいけど、身近な直接関係する病院とかお店は大きいところだけになっていて、他は撤退している。困る。これからどうなるんだろう」
なぜ「家賃の上昇」で医療機関が撤退せざるを得なくなるのでしょうか。