◆「緊急搬送された妻を支えたい」 退団を決めた

妻が体調を崩したのを見て、野球漬けだった夫の考えが大きく変わった。「これまで自分を支えてくれた妻を、今度は自分がサポートする番だ」真喜子さんにこのことを相談すると「お店のことは私が何とかするから、野球を続けてもらっていいよ」の返事。そんな妻の思いやりあふれる言葉に夫婦の絆を感じた夫は「一緒に楽しくお店をやっていこうや」今年夏、球団に退団を申し入れた。

◆「一緒に楽しくお店をやっていこうや」カフェを夫婦2人で 

オープン2カ月前から週に1回、コーヒーの専門家を呼んで、豆の選び方、焙煎の仕方、湿度によるコーヒー入れ方などを夫婦で学んできた。平均4~5時間のレッスンが、時には7~8時間に及ぶこともあった。今でもオープン前にスタッフ全員が1人ずつコーヒーを入れ、商品としてふさわしいものか確認する作業を毎朝行っている。

◆地元産商品も並べて「こだわった店にしたい」

店には地元の果実を使ったオリジナルチョコレートや糸島で取れた米なども並んでいる。

「こだわる所は徹底的にこだわったお店にしたい。まずはまだ完治していない妻の負担を減らすことが僕の役目ですね」ドラフト外の入団から1軍の主力投手にまで昇りつめた男が、妻に寄り添いながら、第二の人生をスタートさせた。