◆「社名の継続」は被害者を置き去りにしている

「では、なぜ社名を守るのか?」と質問されたときの東山さんの答えも気になりました。すなわち「これは創業者や初代グループの呼び名にとどまらない、所属タレントにとってはエネルギーやプライドという性格を担った名称でもあるので、それは守らせていただきます」という理由だったのですが、これはさすがに無理筋だと思いました。

やはり記者たちも「事実認定した性加害者の名前であり、社名を連呼することが被害者のフラッシュバックの引き金になるのではないか。実際そういう方もいます」と翻意を促しましたが、東山さんは「その通りだと思います。はい。正しいと思います」とある種、官僚的な受け答えでした。一体どこまで本気で変えようと考えているのでしょうか。

たしかに、所属タレントとファンのことをよく考えていることはわかりました。でも「被害者ファースト」であるべきだと思うんですね。それがあってのファンであり、所属タレントであると、これは当然のことだと思います。社名継続ということ自体、被害者を置き去りにしている気がしました。

◆企業も意見を表明するべき

ジャニーズWESTというグループ。僕は楽曲を提供したこともあるし、メンバーとテレビで共演したこともあります。その「ジャニーズ」が入っているグループのメンバーである中間淳太君が、大阪のテレビ番組で、「一人でもジャニーズという文字を見て嫌な思い出が蘇ってしまうのであれば、僕は変更すべきだという気持ちもあります」とコメントしたそうです。

所属タレントがこのような発言をしたということは、事務所内でも答えがまとまっている状態ではないということが透けて見えましたね。僕は社名を変えるべきだと思います。子供の人権への配慮というものが、絶対なければなりません。

SDGsを掲げる日本、そして日本企業の人たちも、二枚舌にならないような行動をとってほしいですね。東京海上日動、JAL、アサヒグループHD、キリンHDといった、それぞれの業界最大手のグローバル企業が、ジャニーズタレントのCM起用を解除する動きを一斉に見せています。

これに関しては「そこまでやる必要あるのか?」と、賛否両論あるようです。僕は、企業もきちんと意見を表明してしかるべきだと思います。何も言わずに突然契約解除するということも実際に起きているのかもしれませんが。

僕は世の中における「正しいこと」って、いつの時代も難しいと思うんですね。立場によっても、どう見るかによっても違いますし。だけど、rightかwrongかではなく、fairかunfairで物事を見定めるという気持ちをいつも持つべきです。今回の事件も、そのことを確認するための好機と捉えたいと考えています。