◆悲惨な現場で100年後のいたわり
荒川の河川敷では、日本人と朝鮮人、様々な虐殺の目撃者の証言が、若者たちによって読み上げられていきました。
証言の朗読:江東区、労働運動家、湊七良(みなと・しちろう)。大島製鋼所の辺りに、葦の生えた湿地帯があった。その附近で、憲兵がピストルを構えてなにかを探し、追及している構えであったので、私はその憲兵に何を探しているか問うたところ、飲料水に毒を投げた鮮人がこの葦の中に逃げ込んだというのである。とうとう憲兵と自警団に追い詰められて二五、六歳の青年が頭を撃ち抜かれて無残に殺されてしまった。
民間の自警団も、朝鮮人とみれば片っ端から虐殺していった。これはもう、疑いの余地のない歴史的な事実で、本当に何と言っていいか……恥ずかしくて仕方がありません。
その現場の一つで行われた100年後の慰霊祭では、民族音楽が流れました。韓国から来た遺族、在日の方々に加えて、加害者の私たち日本人も混じり合って、歌って踊って慰霊をする、とても温かい雰囲気でした。こういったことは、とても大事だと思います。
◆「全力で体現した、凄まじいものが映っている」
以前この番組で、映画界で今とても目立っている注目のバイプレーヤーとして、カトウシンスケさんを紹介しました。そのカトウさんも『福田村事件』にも出演しています。リスナーに向けてメッセージをいただきました。
カトウシンスケさん:RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』をお聴きの皆さま、俳優のカトウシンスケです。ただ今、全国のミニシアターを中心に公開中の映画『福田村事件』で、私は『亀戸事件』というまた別の事件の被害者・平沢計七という人物を演じています。
スタッフが総力を挙げて立ち上げた空気の中、僕らキャスト全員が全力で向き合い体現した、何か凄まじいものが映っているかと思います。その一つ一つの体現した人間の身体や表情を、ぜひスクリーンで観てもらえたらうれしいです。よろしくお願いします!
映画『福田村事件』は、9月15日から、福岡市中央区のKBCシネマでも上映が始まります(佐賀市のシアター・シエマではすでに9月8日から上映中)。16日午後には、森達也監督と、久留米市出身の田中麗奈さんによる舞台あいさつ付き上映があるのですが、既に完売となっています。映画は大反響を呼んでいます。ぜひご覧ください。
◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)
1967年生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。東京報道部時代に「やまゆり園」障害者殺傷事件や関東大震災時の朝鮮人虐殺などを取材して、ラジオドキュメンタリー『SCRATCH 差別と平成』やテレビ『イントレランスの時代』を制作した。







