◆キャリアがそのままトレンドに
プレスリーのコピーをするところから始まったブルーノ・マーズの音楽人生ですが、だんだんレゲエやR&B、ヒップホップの方に接近していって、それが彼の音楽性の魅力になっています。ロックンロールとR&B、ヒップホップを1人で全て持っている。まるで「人間ジュークボックス」みたいな存在です。
2010年にデビューアルバムを出した頃は、まだロック色も結構残っていましたが、やがてヒップホップがアメリカで音楽の覇権を握っていくのと同じように、彼の音楽もブラックフィーリングを増していきました。
ラッパーとの共演が増えただけでなく、R&Bやヒップホップを超えて、ちょっとレトロなソウルミュージックへ。そうかと思えば、今の時代の音楽の最先端も取り入れて、再びソウルミュージックに回帰していく。
彼のこの音楽キャリアが、そのままアメリカで音楽のトレンドみたいになっています。その集大成ともいえるものが、アンダーソン・パークとユニットを組んで展開している「シルク・ソニック」です。世界的ヒットの「Leave The Door Open」を聴いていると、ジャンルや時代を超えた存在になったという印象です。
◆異端からメインストリームに
彼が2018年にグラミー賞7部門をかっさらったことがありましたね。あのとき会場に僕もいたんですが、全員がスタンディングして、惜しみなく喝采を送っていました。アジアで生まれ育った一人として、またずっとR&Bを聴いていた立場として、僕も感極まるようなとこがありました。
「アメリカの中といってもハワイ」、「R&Bだけどアジア系」という、異端から始まってメインストリームになっていく。彼に限らず、時代を変えるのはいつも主流ではない人なのかな、ということまで感じさせます。我々の予見だとか偏見とかを破ってくれるような存在。それがブルーノ・マーズだということです。







