◆大麻生産拠点の国境エリアが重点地域
広大な中国のどのエリアで、とくに南部の雲南省が麻薬犯罪摘発の重点地域になっている。山岳部を中心に、大麻など危険薬物の栽培が長く行われてきた。また、雲南省は陸続きで、ミャンマー、ラオス、ベトナム、タイの4か国と国境を接する。
「ゴールデン・トライアングル(黄金の三角地帯)」と呼ばれる地域名を聞いたことがあるだろう。タイ、ミャンマー、ラオスの3国がメコン川で接する山岳地帯で、長く大麻の生産拠点だった。雲南省はここからも遠くなく、国境を越えて密輸入されることもある。
中国の西域、新疆ウイグル自治区からも、大麻製品が都会へ込まれることもある。ウイグルと国境を接するアフガニスタンは、イスラム主義勢力タリバンが支配する。アフガンは、アヘンやヘロインといった麻薬の原料となるケシの世界最大の産地だ。
国連薬物犯罪事務所(UNODC)によると、アフガンでのアヘンの生産量は、世界の8割を占めるという。アフガンからウイグルへの密輸ルートも指摘されている。中国当局はこれら辺境地区を中心に、薬物撲滅運動を続けてきた。
◆危険を伴う麻薬組織の取り締まり
麻薬組織の取り締まりは当然、危険も伴う。今月26日の「国連国際麻薬乱用撲滅デー」に合わせ、中国共産党機関紙「人民日報」が、殉職した英雄のストーリーを掲載した。
雲南省で、麻薬取り締まりを専門にしたある警察官は、麻薬組織のアジトを単身で襲い、摘発に及んだこと24回。合わせて密売人19人を逮捕し、禁止薬物を合わせて51キロも押収した。最後は犯罪組織に殺害されてしまうが、その時、彼は拳銃の引き金に、指をかけたままだったとされる。
書き残した日記には「人々の幸せのために私の血が流れることをいとわない。薬物取り締まりの職務に粉骨砕身したい」と記されていた。職務に殉じた人生は賞賛すべきだが、やや当局による宣伝のにおいも感じてしまう。
雲南省では1982年に、中国で初めて麻薬取り締まりの専門チームが設立された。それ以来、この雲南省では合計60人が麻薬組織との戦いで命を落とした。300人以上が負傷したという。