◆朗報に再審を求める支援者は

きのう(3月20日)、九州で初めてとなる、再審法の改正を求めるイベントが長崎で開かれていました。「検察が特別抗告を見送った」という情報は、開始直前に届き、日弁連・再審法改正実現本部の鴨志田祐美弁護士は「朗報が飛び込んできた」と報告しています。

しかし鴨志田弁護士は「これで喜んではいけない」とも言っていました。逮捕から57年。これほど長い時間がかかったのは、えん罪救済のきちんとしたルールがないからだ、と問題提起しているのです。「検察官の抗告は法律で禁止すべきだ、再審の裁判で争えばいいではないか」と。
袴田さんの再審開始を静岡地裁が決定したのが2014年。それから9年もかかったのです。袴田さんは今87歳、ずっと支援してきた姉の秀子さんは90歳。これでは、いたずらに死を待っていると見られても仕方ありません。法律の改正を、弁護士や支援者は強く訴えています。
えん罪というのは、「起こりうるもの」です。だから私は死刑判決そのものにも懐疑的です。袴田さんは死刑判決を受けていました。もしえん罪だとしたら、大変なことです。もう一つは、真犯人がほかにいるかもしれないということ。真犯人が逃げているとしたら大変恐ろしいことだし、亡くなった方々の無念を晴らすという意味でも死刑判決は無意味だったことになってしまいます。
この事件は、私達が生きている社会でどう裁判が行われていくべきなのか、ということについて、非常に大きな教訓を持っています。

◆「ベレー帽の再審弁護人」鴨志田弁護士に聞く

番組後半では、前述の日弁連・再審法改正実現本部で「ベレー帽の再審弁護人」として知られる鴨志田祐美弁護士に電話インタビューした。

神戸:再審請求事件のニュースが出るたび、テレビの画面によく映っているベレー帽の女性がいます。鴨志田祐美弁護士です。お久しぶりです。
鴨志田:本当に久しぶりですね。
神戸:昨日(3月20日)長崎で行われたイベントは、九州では初めての企画だったんですね。
鴨志田:はい、再審法改正がテーマで九州初開催という記念すべきイベントの30分前に、「抗告断念」という一報が入ってきました。本当に、昨日は歴史的な日になりました。

神戸:フェイスブックにも「世論が歴史を変えました!!」と投稿していましたね。
鴨志田:一報を聞いたときは本当にうれしくて。袴田秀子さんにすぐ電話したんです。横には西山美香さん(湖東記念病院事件で再審無罪)もいたので、直接2人で「おめでとうございます、良かったですね!」と電話で話すことができました。
神戸:秀子さんは本当に長い時間支えてきたわけで、心が揺らいだ時もあったんじゃないかな、と。
鴨志田:お酒に溺れたこともあったそうですし、今でこそマスコミはこうやって報じてくれるけども、最高裁で死刑判決が確定した時に「周りが全部敵に見えた」とよくおっしゃいます。