権力集中が進む今の中国と、リーダーのあり方

朱鎔基氏が支えた江沢民時代、次の胡錦涛時代を経て、今は習近平主席の時代となりました。経済政策一つ取っても、当時の自由度は後退しているように感じられます。冒頭で、朱氏が首相就任会見で「死ぬまで働く」と宣言したと紹介しましたが、のちに彼はユーモアを交えながら、きっぱりとこう付け加えています。

「誤解しないでほしい。『死ぬまで働く』というのは、『いつまでも首相の座に居座る』という意味ではない。私は国民のために全力を尽くし、命のある限り、死ぬまで働くというだけのことだ」

今の中国では、みんなで決めたはずの任期を改定し、その座に居続けるリーダーが存在します。たった一人のトップに権力が集中し、朱鎔基氏のようにトップに続く人たちの肉声が聞こえてこない状況です。

リーダーの気構え、発する言葉、そして行動力。朱鎔基首相の時代は様々な難問もありましたが、北京特派員として取材していて「リーダーが何を語るか」に胸を躍らせた時代でもありました。中国の庶民は今、そんな朱鎔基氏を失い、深い悲しみの中にあります。

◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める。