100基の棺桶と、WTO加盟への陣頭指揮

朱鎔基氏が首相になった当時、アジア金融危機の影響で中国経済は失速しかけており、それでもなお腐敗や不正がはびこる厳しい局面でした。そんな状況下での彼の言葉です。

「棺桶を100基、用意せよ。その中には私の分も入っている。せいぜい共倒れになるだけだ。だが、それによって国家の長期的な安定と発展、そして我々の任務に対する一般大衆の信頼を勝ち取るのだ」

これは、悪徳役人と刺し違える覚悟を示したものです。100人分の棺桶は、99人の腐敗役人を葬り、結果として自分も残り1人分の棺桶に入ることになってもやり遂げるという強烈な決意です。腐敗こそが国家を滅ぼすということを、身をもって強調したかったのでしょう。

リーダーの中には言葉を発し、その言葉に「自分だけが酔う」タイプもいます。朱氏主導の改革は、失業者の増加や貧富の格差拡大につながったとの指摘があるのも事実です。しかし、彼は2001年の中国のWTO(世界貿易機関)加盟で陣頭指揮を執りました。WTOに加われば政府に保護されてきた国有企業は打撃を受けかねないため、国内には大きな反発がありました。それでも彼が主導したWTO加入により、民営化路線と市場化路線が進み、海外から中国への投資を呼び込んで高度経済成長へとつながったのです。