中国側の反応と、悪化する日中関係の「新たな段階」

中国サイドは、これら報道が正しいか認めているのでしょうか。報道が出た翌日の25日、中国外務省の定例記者会見が開かれました。これら情報の確認を求められたスポークスマンは、こう答えていました。

「米中首脳会談に関する情報はすでに発表しています。報道内容と、中国側が把握している状況は符合しません」

「符合しない」つまり「ピッタリとは合わない」という説明です。ただ、報道のどの部分が「符合しない」のかまでは述べていません。習近平氏が「高市総理を名指ししたこと」なのか、また「声を荒らげ、興奮した様子を見せた」ことなのかはわかりません。首脳会談では習近平氏の左隣には、中国外務省の責任者・王毅外相が座っていました。首脳会談の実際と報道との間には、大小は別にして違いがあるのは確かなのでしょう。

ただし、日中関係はこれまで浮いては沈んで、沈んでは浮く、つまり落ち込んでもやがて回復する、そんな繰り返しでした。しかし、中国側の反発、とりわけ習近平氏の怒りは、過去とは別次元なのかもしれません。習近平氏の怒りの大小は別として、米中首脳会談の全体会合で日本批判や高市総理批判を展開したとすれば、真向かいに座ったトランプ大統領だけではなく、ズラリと並んで座った中国側の部下たちを意識して示したのかもしれません。「これからも日本には強い態度を貫くぞ」という意思表示というわけです。

同じ先月末、赤沢亮正経済産業相が中国江蘇省で開かれた国際会議に出席しました。そこで中国の商務相との接触がありましたが、立ち話、あいさつ程度でした。中国がホスト国だから、出席した各国代表とあいさつするのは当たり前であり、最低限の接触に終わりました。

高市総理は、中国で起きた炭鉱事故を受け、習近平主席、李強首相に哀悼と見舞いのメッセージを出しました。中国側へのアプローチにも受け取れますが、日中関係は悪い方向の「新たな段階」に来ているのかもしれません。私が想定してきたレベルとは、すでに違う局面に突入している可能性があります。

◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める。