揺らぐ習近平氏の軍部支配か
国防相は、日本でいう防衛大臣に相当する要職です。現職を含めて国防相が2代続けて処分を受けるというのは、前代未聞の事態と言えるでしょう。これは、習近平主席が腐敗撲滅に断固たる姿勢を軍内外に示す狙いがあったと考えられます。
しかし、これまで盤石と見られてきた習近平主席の軍部支配にも、それを良しとしない動きがあるのでしょうか。習近平体制に反目する、あるいは距離を置くグループが反撃に出た可能性も否定できません。
現段階では、その真相を断定することは困難です。しかし、不穏な情報も流れています。かつて中国国営メディアで軍の取材に従事し、その後海外に拠点を移して活動するジャーナリストが最近、ソーシャルメディアで軍の内情を次々と暴露しています。
それによると、習近平主席に近いとされる現役の高級幹部8人が既に職務を停止され、調査の対象になっているといいます。その理由はいずれも汚職関連とのことですが、情報の真偽は現時点では明らかではありません。
軍拡の陰で広がる腐敗、中国軍の行く末
領海侵犯に代表される海洋進出を含め、中国は毎年巨額の国防費を投じ、軍拡路線を邁進しています。その一方で、その軍内部で深刻な腐敗が蔓延しているという現実は、深く憂慮すべき事態です。かつての中国軍は、内戦時代や抗日戦争の時代から「大衆から針一本、糸一筋さえも取ってはならない」という厳格な規律によって大衆の支持を得て勝利しました。
腐敗は国を滅ぼすと言われますが、それが強大な力を持つ軍部であれば、その影響は計り知れません。中央軍事委員会の何衛東副主席の処分は、遠からず公になる可能性が高いと見られています。その動向は、今後の中国軍、そして中国政治の行方を占う上で、極めて重要な注目点となるでしょう。
◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める







