習近平主席との深い繋がり

その何衛東中央軍事委員会副主席とは、一体どのような人物なのでしょうか。彼は陸軍出身で、一言で言えば習近平主席と非常に近い関係にあるとされてきました。習近平主席は地方勤務が長く、中でも17年間、南部の福建省で働いています。

一方の何衛東氏も、福建省各地の軍組織に長く在籍していました。この福建省での勤務経験が、2人の接点となり、役人と軍人という上下関係の中で親密な関係が築かれたようです。

習近平主席が最高権力者となって以降、何衛東氏は目覚ましい昇進を遂げます。各地の軍組織で出世の階段を駆け上がり、2022年には現在の中央軍事委員会副主席に就任。同時に共産党の中央組織においても、異例の二階級特進で政治局員に抜擢されました。自分の身近にいる人物を重用するという人事は、習近平主席の共通したスタイルと言えるでしょう。

寵愛された側近の「異変」は何を意味するのか

習近平主席の寵愛を受けてきた人物である何衛東副主席の、軍のホームページからの「過去の活動」の抹消。これは一体何を意味するのでしょうか。軍組織は巨大な利権が絡み、莫大な資金が動く世界です。

仮に何衛東氏が過去、あるいは現在において不正に手を染めていたのであれば、習近平主席も庇いきれなくなった、という可能性が考えられます。いかに近しい人物であっても、「切る」「処分する」ことが、習近平主席自身の権力基盤を守ることに繋がるという判断が働いたのかもしれません。

習近平指導部は近年、腐敗の一掃、とりわけ軍における汚職摘発を強力に進めてきました。その結果、軍高官の更迭が相次いでいます。先述の通り、軍の最高意思決定機関である中央軍事委員会のメンバーだけでも半数が処分された、あるいは近く処分される見込みです。

現職だった国防相もその一人ですが、実はその前任の国防相2人も、巨額の収賄などの罪で党籍を剥奪されており、その事実が公になったのは昨年6月のことです。