田植えから秋の収穫へ
そして、種籾がまかれたあとは、早乙女による「田植え」が始まります。地元の小学生の女の子4人が演じました。
神戸:寒くないですか?
小学生:寒いです。
神戸:裸足ですね。
小学生:はい、めっちゃ痛いです。痛すぎます。
神戸:練習してきたんですか?
小学生:はい、練習しました。
神戸:田を作って、代かきして、植えて。
小学生:はい、それをみんなで表している感じです。
神戸:今は、何年生ですか?
小学生:今は小6で、今年は中1です。
神戸:いつまでやるんですか、何歳ぐらいまで?
小学生:今年で最後です。
神戸:小学生の間だけ?じゃあ大事ですね、今年は。
小学生:はい。
歌に合わせて、早乙女が稲を植える仕草をしていきます。
そして、収穫を意味するのは「孕(はら)み女」。女装した男性が大きなおなかを抱えて、大盛りのご飯を抱えて歩いていきます。
「ああ、おなかが痛い」と座り込んで、隣の男性を困らせます。そんなユーモラスな孕み女が収穫を表します。
生命のサイクルへの畏敬
最後に、実りの秋に感謝する所作を「田ほめ」と言います。
田ほめ:ホー、ホー。ホー、ホー。
お田植祭に登場した全員が、宮司に続いて歩きながら、「ホー、ホー」と声を上げて、豊かな実りをもたらした田をほめあげるのです。冬から春の生命の芽生え、秋の実り。そして冬が来る。生命のサイクルへの畏敬の念が、修験道の世界には根付いているように感じられました。
求菩提山の修験道の行事のうち、「お田植祭」はその時代の様子をよく残していると言われており、かつては豊前地方に春を告げる風物詩と捉えられていたそうです。初めて見たのですが、修験道の時代から残った、大切な習俗だと思いました。ただ、行くのは結構大変でした。過疎で人が集まりにくくなっている、ということでした。そういう中で続けていくのはとても大事なことだな、と思いました。
◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)
1967年生まれ。学生時代は日本史学を専攻(社会思想史、ファシズム史など)。毎日新聞入社直後に雲仙噴火災害に遭遇。東京社会部勤務を経てRKBに転職。やまゆり園事件やヘイトスピーチを題材にしたドキュメンタリー映画『リリアンの揺りかご』(2024年)は各種プラットフォームでレンタル視聴可能。最新作『一緒に住んだら、もう家族~「子どもの村」の一軒家~』(2025年、ラジオ)はポッドキャストで無料公開中。







