農業コンサルから「地魚」の世界に

馬淵さんの前職は農業土木関係のコンサルタント。大規模な農場の環境作りなどを手掛けているうちに、現場の生産者たちに直接関わりたいと独立しました。

料理の経験はまったくありませんでしたが、直売所に出入りするうちに海鮮丼のお店をオープンさせることになったのです。

馬淵崇さん「最初は(漁師が)怖くて。でも僕は(魚の事を)知らなかったんで、今も知らないことがいっぱいあるんで、知らないことを聞くっていうふうにしていました。素直に『この魚おいしかったです』っていうのを伝えていくと、少しずつポロっと話してくれるようになった、というのを十何年続けてきましたね」

漁師の声に耳を傾け、経験を積む中で、海鮮丼は直売所の名物に成長。
「駅前のバル」でお酒と魚堪能

4年後の2015年にはJR筑前前原駅前にバルをオープンしました。

旬の地魚の刺身の盛り合わせのほか、イギリス風のフィッシュ&チップス、海鮮パスタなど、お酒を飲みながら糸島の魚を堪能することができます。
「地魚の価値」高めるために

漁師さんたちと一緒に糸島の魚を盛り上げてきた漁協の鹿毛さんも馬淵さんの良き理解者です。

糸島漁業協同組合業務課長 鹿毛俊作さん「漁協は漁師さんが捕ってきた魚を市場におろしてそれで終わりの仕事やったけど、馬淵くんが『もうちょっと地魚を大事にせないかん』って言って。『糸島にこげないい魚がある』っていうのも、みんな糸島に住んでいる人自体が当たり前になり過ぎて忘れよったのをアツく語られたのが第一印象」
畑違いの農業コンサルから飛び込み、漁業関係者も巻き込んで糸島の地魚の価値を高めようと取り組んできた馬淵さん。
会員制の「地魚バンク」とは

その活動を広めるために設立したのが会員制の「地魚バンク」です。

糸島の漁業の現状を知ってもらうとともに地魚の価値を高めていくことを目指して、体験イベントや観光客向けのツアー、料理教室などを次々に企画、インバウンド向けのPR動画も制作しています。
100年後も見据えて活動

馬淵さんは「地域で100年後も喜ばれる」ことを活動の理念に掲げています。
馬淵崇さん「長いようで短いのが100年だと思っていて、目先のことだけで判断して例えば『大きな設備・施設を作っちゃった。で、コレどうするの?』と。そうならないよう責任をもった形で、しっかり100年後をイメージしながら、どうあるべきかというところが自分の中ではテーマ。多分一生そこに向き合っていくとそういうふうに思っています」