未熟な法整備で犯罪の温床に
なぜ、インターネットを使った外国人の犯罪集団が、カンボジアに、拠点を置くようになったのか? その理由はいくつかある。一つは、中国とカンボジアが陸続きで国境を接していること。中国人の犯罪集団がカンボジアへ流れ込んだ。そして、国境を越えてカンボジア側に入ったすぐのところに、中国資本が投じたカジノ施設がここ数年で数か所できた。蜜月関係にある中国からカンボジアへの支援の一つと言っていいだろう。
カジノに金を賭けるのはカンボジア人ではなく、主に中国人旅行客だ(中国国内ではカジノはできない)。ただ、違法営業が目立ち始め、カンボジア当局も取り締まりに乗り出した。そこで運営費・維持費のかからないインターネットでの賭博システムが出来上がった。
もう一つの理由は、何よりカンボジアの法整備が未熟な点。そして、インターネット上の管理システムも整っていないから、犯罪の温床になっているという側面がある。
日本人の特殊詐欺グループも摘発
組織的詐欺を巡っては、日本でも、カンボジアなど海外を拠点とする特殊詐欺グループが摘発されている。犯罪者は中国人だけではない。昨年9月、カンボジアで日本人による特殊詐欺グループ25人が身柄拘束された。日本の警察庁から「オンライン詐欺をしている日本人グループがプノンペンにいる」という情報を受けたカンボジアの警察がアジトに踏み込み、一網打尽にした。
詐欺グループは、日本に住む被害者に対し、日本の携帯電話会社を名乗って「有料のウェブサイトの支払いを滞納している」とニセのメッセージを送っていた。そして、電子マネーをだまし取ろうとしたという。警察庁によると、昨年2023年の1年間で、カンボジアなど4か国で日本人69人が特殊詐欺を働いたとして、逮捕された。
これは驚くべきニュースだろう。国連は昨年「カンボジアのオンライン詐欺拠点で、意に反して働かされている被害者が、10万人を超える」と発表した。働かされている被害者は主に若者で、日本人を含めた外国人も目立つ。マネーロンダリング、仮想通貨に関する詐欺、それにロマンス詐欺などのオンライン詐欺業務に強制されていたという。
もう一つ。ASEAN=東南アジア諸国連合は今年3月、プノンペンで、オンライン詐欺防止に関する作業部会を初めて開催した。国境を越えて各国に広がるオンライン犯罪の防止策について話し合ったが、カンボジアで作業部会が開かれた意味は、この国が犯罪の拠点になっており、なんとかしないといけないという思いの証でもある。