グローバル企業がなぜ問題意識を持たなかったのか

もう一つの問題として、彼らが「ユニバーサルミュージック」という、世界有数の国際企業のレーベルの主力アーティストであるということ、また今回の曲が、コカ・コーラという誰もが知るグローバル企業のタイアップソングだったということが挙げられます。

そんな背景を持つ企業に従事する人たちが、ずっとノーチェックのまま、MVを作り上げるところまで、問題意識も持たずに黙認していたというのは、にわかに信じがたい話です。類人猿に人力車を引かせるというような、分かりやすく白人至上主義にも繋がるおそれのあるシーンは、国際的な視点があれば、炎上するという予測はできたはずです。これを奇貨として、考えを改めるしかないと思います。

とはいえ、こういう問題のせいで、アーティストが委縮して、自由な発想にリミッター(制限)をかけてしまうというのは、我々作る側として一番懸念しているところです。決して内向きになったりしないでほしいと思います。

Mrs. GREEN APPLE並びに大森さんの対応も早かったので、こういうときにダンマリを決め込むようなタイプのアーティストではないということもよく分かりました。ただ、大森さんの謝罪も突っ込みどころが多くて、そこもどれぐらい事前にチェックされたのかどうか気になります。

アーティストはファン以外のことも視野に

同じ音楽業界の人たちがどういう反応をしているのか、僕なりにSNSで調べてみました。MY FIRST STORYのHiroさんは「なんでも燃える時代なんだね。気をつけよう」という投稿をしています。この投稿も突っ込みどころ満載ですね。彼は我が事として考えたのかもしれませんが、この言葉自体が“燃える”ことになってしまっています。

世代はぐっと上になりますが、DREAMS COME TRUEの中村正人さんもXで6月14日「この経験でおおいに学び、おおいに辛い思いをして前に進むがいい。それは何よりも自ら産み落とした楽曲と、その楽曲を愛するひとりひとりのためだ」「音楽を生業とするということは、そういうことだ」という厳しさも含んだ、先輩としての思慮のあるアドバイスを与えています。

アドバイスであり忌憚のない感想でもあるんでしょうが、その通りだなと思う一方で、もう一言付け加えてほしかったことがあります。この文章だけだと、やや視野狭窄に陥るおそれがあるというか、「アーティストについているファンを大切にね」というふうにも聞こえます。

しかし今回は、ファンの人たちが騒ぎ出したというよりも「このご時世に鑑みてどうなんだ」とか「海外の人がこれを観たらどう思うだろう」とかそういうところで起きた話なので「ファンのことを思えばこそ」と中村さんが言っていること自体は間違っていませんが、やはりアーティストは、自分たちの目の前のファン以外のことも視野に収めてほしいなと思うのです。