居場所を求める子供たち

棚オーナーが作ったフィギュア「ジオン公国軍MS-14ゲルググ」も

牛島さんの本業は、筑後市のスクールソーシャルワーカーです。民間図書館を開設したのには、自分が見てきた子供たちの現実がありました。

神戸:どうしてこういう「民営図書館」を開こうと?

牛島さん:スクールソーシャルワーカーは、不登校だったり虐待を受けていたりするお子さんとか、家庭の課題がいろいろあるお子さんの支援をさせてもらっているんですが、なかなか子供が日中に過ごせる場所がない。自分が関わっている中学生に、すごく本好きな女の子がいました。学校にもちょっと行けなかったので、「自由に過ごせる図書館があればいいなあ」と言っていたので、「じゃあ、図書館作ろうか」と。勢いで、図書館をこんな形で運営をさせていただく形になっています。日中、不登校の子もたくさん来ています。

神戸:利用は、誰でもできる状態?

牛島さん:はい。子供、学生は無料で、それ以外の方は月500円でサポート会員になって、ここの運営のサポートをしていただける形になっています。3月31日にオープンし、2か月ぐらい。やっと少しずつ、子供たちが来てくれるように。いろんな方が協力してくれて。

神戸:順調ですか?

牛島さん:そうですね、思ったよりは。「大丈夫かな…」と思っていたんですけど、ボランティアや会員になってくれた人たちが協力してくれて。ここの留守番、「図書係」をボランティアさんがしてくれて、日替わりでいろんな方が協力してくれている形です。

居場所を求めている子供たちは、どこにでもいます。筑後市でもそれなりの数がいるみたいですが、それ以外の子も来て、いろいろな交流をしています。「消しゴムはんこを作ろう!」なんてイベントも企画したり、地域の方と大学生や大学の先生などが語り合う場を作ったり。「語る」という場になっている、筑後市の「みんとしょかたる」です。

みんなが「かたる」場に(みんとしょかたる提供)

【ちっごあかでみあ】
日時:6月15日(土)午後2時半~4時半
テーマ:『子どもの居場所ってどんなとこだろう?』
内容:子供の居場所つくりをしている大西良・筑紫女学園大学准教授と一緒にお話ししながら考える
定員:20人
大人:1000円

ゴロゴロできる”小上がり”スペースも

本棚だけではなくて、子供たちが楽しめるような工夫もありました。

牛島さん:子供たちがすごくボードゲームが好きなので、自由にボードゲームをできる場所にと、ボードゲームを置いています。

神戸:よく見るものもありますね。オセロ…あ、人生ゲーム!

牛島さん:これは寄付でもらったものです。けっこう寄付でいろんな方からいただいたのをここに置いています。小さい子供さんから、中学生・高校生もできるようなものもたくさんあるので、日中に来たらみんなでボードゲームしています。

神戸:ちょっと遊んで、本を読みたければ読んで。

牛島さん:自由に子供たちが過ごせるという形で。子供さんがゴロッとでしたいということを言っていたので、「じゃ、こたつを置ける場所を作ろうか」と。今は夏なのでこたつはないんですけど、いずれちょっと冬になったらこたつを置こうかなと思っています。横になって本が読めるみたいな形にさせてもらっています。

子供がゴロゴロできる小上がり

ゴロゴロしながら本も読めるし、ボードゲームもでき、子供の声が平日はかなりこだましているそうです。開館時間は午前10時~夕方5時まで。駅前のいい場所ですし、大切だなと思いました。

民間図書館は各地で広がっているようですが、筑後市では初めて。見学に行ってよかったです。勉強になりました。人が作る本棚を見るのは楽しいですよ。利用者がもっと増えたらいいなと思いました。

◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)

1967年生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。ニュースやドキュメンタリーの制作にあたってきた。報道部長、テレビ制作部長、ドキュメンタリーエグゼクティブプロデューサーなどを経て2023年から報道局解説委員長。最新ドキュメンタリーは映画『リリアンの揺りかご』(U-NEXTで6月18日まで有料配信中)。