「戦争の残酷さを伝えているのがゲン」原作者・中沢さんの妻
「はだしのゲン」の作者、故 中沢啓治さんの妻・ミサヨさんは、「教育委員会が決めることなので、仕方がないとは思いますが、残念です」と肩を落としました。
ミサヨさんは、「いまの児童の実態に合わない」といった指摘について「あの時代は食べる物もなかった。豊かな時代に暮らす子どもたちと実態が合わないは当然」と話します。
そのうえで、「なぜゲンが街角の浪曲で稼がなければならなかったのか、なぜ母親のためにコイを盗まなければいけなかったのか。子どもでも、そうしなければ生きていけなかったからです。『生きろ』というメッセージが込められている」。こうした背景をしっかりと教えることこそが重要だと訴えます。

また、ゲンの父親が家屋の下敷きになり、火の手が迫る中で、ゲンに逃げるように迫る場面も、教材では使われなくなります。

連載当時、アシスタントをしていたミサヨさんは、啓治さんがこの場面を描いている姿が忘れられません。「描いていた手が突然止まるんです。『熱かったろう、熱かったろう』って涙を流して」

描き始めては筆を止め、また描き始めては筆が止まる。啓治さんは、つらそうに机に向かっていたといいます。「被爆者は言いたくても言えないことを心に持っている。その思いを込めたのが、はだしのゲンなんです」。
ミサヨさんは力を込めて訴えます。「きれいな戦争なんてない。戦争ほど残酷なものはない。その残酷さを伝えることが、戦争反対、二度と戦争しないという気持ちにつながるのです」