「恋をさせてあげたかった」。仏壇に手を合わせた90歳の男性がふと漏らした言葉です。見つめる先には、少女の遺影がありました。当時17歳だった姉です。たった一発の原子爆弾によって奪われた命の一つです。
核兵器の使用、保有、威嚇など全面的に禁止する核兵器禁止条約の第3回締約国会議がアメリカ・ニューヨークの国連本部で3日から開催されます。1945年8月6日、きのこ雲の下で何が起きたのか。RCCに残る被爆者の声を改めて伝えます。

2021年2月。広島市中区の原爆資料館に杖をつく音が響きます。14歳で被爆した大本久夫さん(当時90歳)です。ゆっくりとした足取りを止めたのは、ボロボロになったブラウスの前。大きく破れ、かすり模様は焼け落ちています。当時17歳だった姉の利子(としこ)さんが、身につけていたものです。
大本久夫さん(2021年取材)
「なんであんたは、若いのに苦しまないけんかのって思って。なんで、あんたじゃったんかのう」