抗がん剤も効果出ず…手術で左足を切断
店を閉め、入院後の約3か月間、抗がん剤の投与を続けるも効果が出ず、この年の7月に左足切断の手術を受け入れることを決めた。
原田口さん:
「最初は抗がん剤でがんを小さくして退院するくらいの気持ちだったけど、手術で切ると言われ…病院を抜け出したかったし、本当に苦しかった。告知された翌日が手術の日だったんですけど、今考えると悩む時間が逆に1日でよかったです。1週間前とか1か月前に言われていたら、もっと落ち込んでいたと思う」

国立がん研究センターによると、原田口さんが患った脂肪肉腫は、筋肉や脂肪、神経などの軟部組織から発生する悪性の「軟部肉腫」の一種。全身のあらゆる部位に発生し、約60%は手足に発生すると言われている。
日本では人口10万人あたり年間約3人が新たに診断・治療を受けているとされ、肺がん・胃がんなどのがん患者と比べると非常に少ない。「軟部肉腫」には様々な種類があり、なかでも脂肪肉腫が最多で、中・高齢者に発症する傾向があり、進行すると遠隔転移を生じ、特に肺への転移が多いとされる。
主な症状は、しこりやはれであり、痛みは伴わないことが多い。深部に発生した場合、かなり大きくなってからはじめて気が付くことも。
腫瘍の種類や悪性度により治療方針は異なるが、再発の可能性を減らすため、主に腫瘍のまわりの健常な組織を含めて広範囲に切除する手術を行う。治療終了後に腫瘍の再発・転移を生じることも少なくないため、定期的に通院し、検査を行うことが必要という。

原田口さんは手術で左足の膝下から全てを切断。リハビリを経て翌年の1月に退院し義足の生活をスタートさせる。
原田口さん:
「最初は足ってどうやって出すんだろうという感じでうまく歩けませんでした。感覚はあります、手術で神経をつないでいるようです。もう走ることは忘れましたが、今は日常に溶け込んでいます。一体感があり、切断した足がそのまま伸びているかのように地面もしっかり捉えています」