今年度の最低賃金は全国平均で現在の時給961円から1004円に引き上げられ、さらに岸田総理は2030年代半ばまでに最低賃金を全国平均で1500円に引き上げることを目指すと表明しました。労働者の待遇が改善される一方で中小企業からは原材料費の高騰に続く負担増に悲鳴の声があがっています。

経営者を悩ませる「103万円の壁」

大分市にある「つるさき食品」は、“サンチー”の愛称で長年親しまれている三角チーズパンを製造しています。この会社では25人の従業員のうち20人がパートやアルバイト。10月から改定される最低賃金の引き上げに頭を抱えています。

つるさき食品・足立洋三社長:
「物価高、エネルギーの高騰があって、またかという感じ。特に今年は厳しく感じている」

サンチー

全国で最低賃金の引き上げ額が最も高かったのは島根と佐賀の47円で、次いで山形と鳥取が46円でした。大分では10月6日からパート・アルバイトの時給を899円に引き上げられることが決定。物価上昇の影響を踏まえ、現行から45円アップと過去最大の上げ幅となりました。

労働者は待遇が改善する一方、苦しいのは中小企業。つるさき食品では10月の最低賃金の引き上げによって、人件費が5パーセント程度増える見通しです。さらに経営者の頭を悩ませるのが扶養控除などの範囲を超えないように働く人たちの「103万円の壁」です。

つるさき食品・足立洋三社長

つるさき食品・足立洋三社長:
「大多数がパート・アルバイト、あと主婦がその4分の3を占めているので103万円の壁を大変重く感じている」

最低賃金が上がっても年収を103万円以下に収めるには労働時間を短縮するしかありません。この穴を埋めるために中小企業が新たな人材を確保するのは難しく、人手不足を加速させる可能性が指摘されています。

つるさき食品では9月から主力商品の値上げを決行。事業継続のためにも価格転嫁に踏み切らざるを得なかったといいます。

つるさき食品・足立洋三社長:
「本当は去年から値上げしたかったが、ただそれが客に理解してもらえるか非常に不安が残る。乗り切れるか乗り切れないかは従業員とともにどれだけ良い商品を出せるか、事業を続けられるよう頑張りたい」