当時の体験を少しでも多くの人に知ってもらい交通事故をなくすため、2人は自分たちの言葉で語りました。

竹山武志さん:
「思い出したくなかったっていうところもあったと思うんですけど、しっかりとね、役目を果たしてくれたっていうかね。よく頑張ったって褒めてあげたいなと思う」

弟を亡くした悲しみをとうとうと語りながら、刹那的に起きる事故の悲惨さを全国各地で訴える2人のことばは多くの人の心に刺さり、去年11月に警察庁から表彰状が贈られました。

交通事故撲滅を訴える2人(熊本市 去年11月)

「あたり前の日常が最上の幸せということに気づいてほしい」

竹山さん一家は笑顔が絶えません。長男、長女は社会人となって実家を出て暮らしていますが、行動力のある父親の武志さんと精神的な支えとなっている妻の文さん、それから次男の弦伸さん、三男の佳克さん、次女の明里さんが一緒に暮らしています。

竹山武志さん:
「生きていることの素晴らしさを実感するためにも、社会の常識やルールをしっかり守り、当たり前の日常が最上の幸せということに気づいてほしい。悪いことが起きてからでは遅い、ルールを破った時に何がおきるのか、良いことは何も起きない想像力を働かせてほしい」

さらに、竹山さんは続けます。

「人生に二度はありません。過去は変えられないが、未来はいくらでも変えられる。私たち大人が保護者としての役目、役割の一つとして過去から学び、そして責任ある未来を築く使命を背負っている。そのことに気づいてほしい。生きていることに心から喜びを感じる人が増えてくれるのが願いです」

亡くなった4歳の我が子の魂と生きる

竹山さん一家

交通指導員を7年続けると車の窓を下ろしてあいさつをしてくれる人が増え、交通安全への意識が高まっていると感じていて、やっていることが間違いではないと確信しています。

取材したこの日、春の息吹を感じさせる菜の花の香りに包まれた竹山家は一家総出で恒例の餅つきをしました。自然が育んだ春の勢いを感じる新芽が出たヨモギを入れた餅です。竹山家は、普段から餅つきをして家族のきずなを深めています。

餅つき

事故ゼロを目指す竹山さんはこれからも通学路で車のドライバーにルールを守る優しい運転を呼びかけながら、子どもたちの命を守るために交通安全の指導を続けていきます。

わずか4歳でこの世を去った我が子、沓里ちゃんの死に報いるため、彼の魂の存在とともに…