被爆地で行われたG7広島サミットが21日に閉幕しました。
長崎の被爆者や専門家はどう受け止めたのでしょうか。

ウクライナのゼレンスキー大統領が急遽参加し、一層注目を集めたG7広島サミット。
19日には、G7各国の首脳が揃って原爆資料館を視察し、広島の被爆者とも対話しました。

長崎の被爆者の受け止めは様々です。

長崎の被爆者 三瀬清一朗さん(88):
「今回広島であったってことは僕はよかったと思う。あれだけの皆さんたちが広島の資料館を見られたってこともね。
世界にアピールできたと思いますよ。」

一方、残念に感じていることもあります。

三瀬さん:
「やっぱり広島と長崎と一緒にね、メイン会場である広島で被爆者の話を聞いてもらえる、会うだけでもいいわけさ、それができなかったっていうのがね、ちょっと心残りがありましたね」

G7サミットとしては初めてとなる『核軍縮』についての成果文書『広島ビジョン』も出されました。

この中では──
『ロシアによる核兵器による威嚇、使用は許されない』と表明したほか、
『中国の核戦力の増強が世界の安定にとって懸念』となっていること、
透明性確保のため『G7以外の核保有国も核戦力などのデータを提供』することなどを求めた一方で、G7各国については『核抑止を前提』としていて、核軍縮に向けた具体的な内容はありませんでした。

長崎大学 核兵器廃絶研究センター 中村桂子准教授は「広島ビジョンから核軍縮をG7の枠組みで考えることの限界が見える」と指摘します。

長崎大学 核兵器廃絶研究センター 中村 桂子准教授:
「G7の国々の核兵器依存というのは、はっきりと正当化されています。
防衛目的のための “必要な核兵器”であって、あくまでこれは『抑止』であると。
しかし、ロシアや中国や北朝鮮は『無責任な 間違っている──正しくない、誤っている核保有国である』と、こういった2つに分けている考え方なんですね。
“自分たちの核保有”や “自分たちの軍備増強”や “自分たちが戦う”ということを『正当化』して…というところが透けて見えてしまうと。
やはり それは相手側の反発を生んで、結局、悪いサイクルというのを継続させてしまうという恐れもあると思います」

長崎被災協の田中会長も、今回の『広島ビジョン』に落胆しています。

長崎原爆被災者協議会 田中 重光会長:
「核の軍縮・廃絶について、なんら、あの文章からは見えないんですね。
日本の世論が、もっと強く日本が禁止条約に参加しろっていう声を大きくしていく。
やはり被爆国の日本が参加することによって、その流れが変わるんだと」

被爆地で開催されたことで注目を集めた広島サミット。
しかし、核兵器禁止という視点では踏み込んだ内容はなく、“現実路線” にとどまったと言わざるを得ません。