(住吉 光キャスター ※以下 住)長崎の#暮らし#経済ウイークリーオピニオン、今週も平家達史NBC論説委員とお伝えします。

(平家 達史 NBC論説委員 ※以下 平)よろしくお願いします。今日のテーマはいま経済界が最も注目しているこちらです。

  記録的円安 暮らしへの影響は

(住)ニュースでも連日、取り上げられていますよね。
(平)はい、今回の円安は20年ぶりの水準と言われています。


こちら過去5年間の為替相場の推移なんですが、これを見ると今年に入って急激に円安が進んでいるのが分かります。
さらに今日の取引では1ドル129円を突破し、130円台が目前に迫っています。

(住)『円安』『円高』は、ニュースではよく聞きますが、為替になじみがないといまいちピンとこない言葉ですよね。

(平)「円安」「円高」とは、為替市場における "外国通貨に対する円の価値"を示す言葉です。通貨同士で比較とすると分かりにくいので、『1ドルのものを円で買う』ということで説明します。


例えば、同じ1ドルのものを買うのに左は80円で買えるのに、右は120円を払わないと買えません。
今はまさに右の状態で、これまで120円も払わなくても買えたのに、今は120円以上払わないと買えないということです。


つまり、ドルに対して円の価値が下がった、言い換えれば『円がドルに対して安くなった』ということで "円安" と言われるのです。
裏返すと、"円安" になると、海外のものを買うときに『これまでより多くの円を払わなければならなくなる』ということです。
なので海外からものを「輸入」する場合に大きな影響を及ぼします。


(住)ということは私たちの暮らしの中でも海外から輸入しているものは値上がりするということですね。

(平)そうなんです、まずはその一例を取材してきました。

世界的な需要の増加からコーヒー豆の価格が年々上がる中、コロナによる供給量の減少もあり豆の仕入れ価格はこの半年間でおよそ3割も上がったといいます。

それに加えて今回の急激な円安。

国内で流通するコーヒー豆はほとんどが輸入品のため、マスターの江村さんは影響は避けられないと見ています。

囁き坂 江村 隆司 マスター「たぶん来月あたりから(影響が)出てくるんじゃないかな。それ以前にコロナの問題、それから流通の問題。それと天候の問題で少し上がってるし。43年やってて初めてです、こういうことは」

これに光熱費の上昇も重なり、店で出すコーヒーの価格を維持するのは難しい状況となっています。

江村マスター「電気、ガスがまた上がっているという状態で、なかなかコーヒーに対しての良い話はないですね。もうどうかしたら月に一回ずつ(価格を)見直しする必要があるかもしれないですね。今後は」


(平)為替市場は変動しますので、円安になったり、円高になったりすること自体は普通に起こります。ただ、ここ最近の円安の進行があまりに急なため、企業の対応が追い付いておらず、困っているというのが現状です。

(住)輸入品を取り扱う企業にとっては死活問題と言えそうですが、私たちの暮らしへの影響はどうでしょうか?
(平)暮らしへの影響も決して小さくないんです。中でも円安を避けて通れないのが食料品とエネルギーです。


こちらは我が国の『食料自給率』と『エネルギー供給の構成』なんですが、食料自給率は約37%。残る63%は輸入に頼っているといます。
そしてエネルギー供給の8割以上を占める化石燃料は、ほとんどが海外から輸入されています。

(住)つまり円安が進めば進むほど食料品やエネルギーの価格も上がってしまうということですね。

(平)しかも影響はそれだけに留まらないんです。円安は輸入品だけでなく国内の食料生産にも打撃を与えているんです。

およそ1800頭のブタを飼育する大村市の上野養豚。いま、エサ代の高騰で苦境に立たされています。

上野養豚 上野 活樹さん「前々年の秋ぐらいから、トウモロコシとかがすごく上がって、それでさらにこの円安で追い打ちをかけて。ひと月のエサ代だけで200~300万円近く上がってしまってるので」

エサに使われる穀物は大半が輸入品のため、円安は経営の圧迫に直結します。
こちらではエサにパンの粉を混ぜるなどコストを抑える努力をしていますが、対策は追いついていないのが現状です。

さらに、コストの上昇分を販売価格に上乗せできない"生産者としての事情"も悩みの種となっています。

上野養豚 上野 活樹さん「(値上げを)やりたくても、結局、卸とか、先の方が高く買ってくれなければ何も変わらない、いまはエサが高いけど(豚肉の)価格が追い付いてない」「畜産物をもっとみんなが消費してくれると、少しずつでも上がってくれるのかなと…でも、一般消費者のものも全部上がってはいるので、難しいですね」


(平)これは畜産に限ったことではなく、輸入の割合が高い大豆を原料とする豆腐や油などの製品にも当てはまることです。
今の急激な円安に企業が対応できないと事業が継続できなくなるかもしれませんし、業種によっては円安で輸入コストが上昇した分を販売価格に上乗せする必要に迫られるかもしれません。

本来、円安と円高は、どちらもメリット・デメリットがあります。

円安の場合は"国内で生産したものが海外で高く売れる"ので、輸出関連企業の業績が上向いたりもするんですが、海外に拠点を置く国内企業が増えていたり、そもそも部品を輸入していたりするので、以前と比べると、円安の恩恵は小さくなっています。

(住)となると、これ以上の円安の進行は食い止めた方がいいと感じるのですが、今後の見通しはどうなっているのでしょうか?
(平)そもそも今回の円安を引き起こした一因は、欧米と日本との金融政策の違いです。

アメリカやヨーロッパでは、経済がそこそこ堅調な中、エネルギー価格の上昇などによる物価高、インフレを懸念して、それぞれ中央銀行が”金利の引き上げ”を示唆する発言をしています。
一方、日本はというと、日銀の黒田総裁は"強力な金融緩和政策を続ける"と明言しています。


このため、金利の低い円を売って金利の高いドルを買う動きが加速して急激な円安につながっています。
さすがに黒田総裁も「急速な円安はマイナス」と発言していますが、今の金融緩和政策を変更するにはいたっていません。

日銀が金融政策を変更するか、海外の景気が再び減速して海外の中央銀行が金融緩和に戻るようなことがないと、今の『円安局面が大きく変わることは考えにくい』というのが正直なところです。

(住)日銀 支店長を経験された平家さんとしては、今後どのような手を打つべきだとお考えでしょうか?
(平)やや極端な話になりますが、"日本の金利が上がることを認める"か、"物価高を認める"か、どちらを選ぶかを考える時期に来ているのだと思います。

(住)ウイークリーオピニオン、ここまで平家 達史 NBC論説委員とお伝えしました。