長崎には、「被爆者」と認められず「被爆体験者」と呼ばれる人たちがいる。国から“心の病”とされ、救済の線の外側に置かれ続けてきた。

彼らは、原爆投下後に雨や灰を浴び、下痢や鼻血の症状が出たこと、家族や近所の人たちが次々と病に倒れていったことを証言し、原爆で拡散した放射性微粒子による「内部被ばく」の被害を訴えている。

広島では裁判での勝訴をきっかけに新基準が作られ、「黒い雨」を浴びた7千人を超える人たちが2022年度以降、新たに被爆者と認められた。長崎は新基準の対象外。

広島・長崎の原爆の人体影響について、国や専門機関は爆発から1分以内に出た強烈な「初期放射線(外部被ばく)」のみを重視し、雨や灰による内部被ばくの影響は「無視できる程度」としている。

そんな中、今年4月、原爆の「内部被ばく」が70年にわたって続いていた可能性を示す論文を、長崎大学の研究チームが発表した。

広島に原爆が落とされた3日後に爆心地付近の焼け跡を歩き、70年後に亡くなった被爆者の肺の組織。そこから、広島原爆に使われたウランが放射線を出した痕跡と、細胞がボール状に破壊されてできたとみられる複数の空洞が確認されたという。その空洞は「デスボール」と名付けられた。

当時8歳だった女性が体内に取り込んだ放射性微粒子が、死に至るまでの70年間、内部被ばくをもたらし続けた可能性を示している。

人類が核分裂を発見して88年。放射線被ばくの人体影響は、すべてが解明されたわけではない。

NBC長崎放送では、今なお裁判も続く被ばく影響の線引きについて考えるドキュメンタリー『冷たい定規~被爆81年・測れない声~』を5月29日深夜26時54分から放送する。ナレーターは長崎在住のナレーター・声優、初村健矢さん。