長崎県島原市で同居する弟を殺害した罪に問われた男の裁判員裁判で、長崎地裁は30日、男に懲役12年の実刑判決を言い渡しました。争点となっていた知的障がいと統合失調症を抱えている男の刑事責任能力について、裁判所は認める判断を示しました。

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判決を受けたのは、長崎県島原市に住む39歳の無職の男です。

判決によりますと、男は2023年10月、自宅で同居していた当時31歳の弟の胸などを包丁で複数回刺して殺害したとされています。

男は軽度の知的障がいと統合失調症を抱えており、裁判では男が抱える障がいと病気が犯行に与えた影響、つまり刑事責任能力の有無が争点となっていました。

30日に開かれた公判で、長崎地裁の太田寅彦裁判長は「統合失調症や軽度知的障害による影響は限定的。意思決定に大きく関わったとは言いがたい。ただし、家庭環境や被害者からの暴力などの犯行に至った経緯はくむべきである」などとして、懲役15年の求刑に対し、懲役12年の実刑判決を言い渡しました。

《解説》刑法では「心神喪失なら罰しない」「心神耗弱なら刑を減軽」と定めている。裁判では被告の知的障がいや統合失調症が、犯行に影響したと言えるかが判断される。統合失調症だからといって自動的に無罪になるわけではなく、最終判断は裁判所(裁判官・裁判員)が下す。