豊崎なつきアナウンサー(以下:【豊】)長崎の暮らし経済ウイークリーオピニオン。平家達史NBC論説委員とお伝えします。

平家達史NBC論説委員(以下:【平】)今回は長崎の観光を考える上で非常に重要なテーマについて考えてみたいと思います。『長崎観光の魅力アップへ!「宿泊税」どう使う?』です。

長崎県内で今のところ宿泊税を導入しているのは長崎市のみで、ホテルや旅館、民泊の宿泊者に対し2023年4月から宿泊税を課しています。また、長崎県でも宿泊税の導入に向けた検討が始まっています。

国内観光地で導入が進む「宿泊税」その目的は

【豊】そもそも、宿泊税とはどのような税金なのでしょうか?

【平】宿泊税は地方自治体が独自に設定できる「法定外目的税」です。崎市では宿泊税を「都市の魅力を高め、国内外の人々の来訪と交流を促進し、観光振興を図る施策」に要する費用に充てるとされています。

【豊】長崎県内では長崎市のみ導入ということですが、全国的にはどれくらいの自治体が導入しているのでしょうか?

【平】2025年4月現在で全国12の自治体が宿泊税を導入しています。九州では長崎市以外に福岡県と福岡市、北九州市が導入済みです。

【豊】私たちも福岡の宿泊施設に泊まる場合は宿泊税を払わないといけないということですね。となると、税額が気になるのですが?

【平】税額の設定は自治体によってまちまちなのですが、ほとんどの自治体が『定額方式』を採用しています。例えば、長崎市の場合、宿泊料金1万円未満で100円、1万円以上2万円未満で200円、2万円以上で500円となっています。

ちなみに京都市では来年3月からの宿泊税の引き上げが決まっていて、宿泊料金が10万円以上の場合の税額は現在の1,000円から10,000円に引き上げられます。

これらの税額が宿泊料金支払い時に加算されることになります。

【豊】京都の例をみると旅行の予算にも影響が及んできそうですが、宿泊税による税収がどのくらいあって、そのお金が何に使われているのかも気になりますね。

【平】その点について、長崎市の担当者に話を聞きました。

「宿泊税」長崎市の年間税収額と その“使い道”は

長崎市市民税課・前田一郎課長「令和5(2023)年度の決算、収入済み額になりますけど約2億9700万円になります」

年間およそ3億円にのぼる長崎市の宿泊税収。今後の観光振興に向けて何に、どのくらい使われているのか?観光政策の担当者は。

長崎市観光政策課・柴田恭郎課長「まず重点的には訪問客の呼び込みのためのプロモーションにお金をかけた」「SNSであったりとかも当然ですけど、域外の人たちに届けるというところで雑誌に掲載したりとかを含めたところでプロモーションをかけたと」

長崎市によりますと、宿泊税で得た予算のおよそ半分が「情報提供」に使われています。長崎の魚の鮮度の良さをPRする「さしみシティ」のパンフレット作成もその一つで、市の公式観光サイト運営にも宿泊税の一部が充てられています。

長崎市観光政策課・柴田恭郎課長「実際上、宿泊税自体からも分かる数字としては、かなり実数が分かってきてますので」「宿泊者数というか実際に泊まった数も分かってますのでそういった部分としても令和5年度より6年度も増えてるところがありますので一定の効果があったものと思っております」

【豊】長崎市は宿泊税の使い道について、情報発信に重点を置いているとのことでしたが、これについて平家さんはどうお考えでしょうか?

【平】長崎市は宿泊税の活用について、以下の5つの柱を掲げています。それが「サービス向上・消費拡大」「情報提供」「受入環境整備」「資源磨き」「緊急時の対応等」です。

このうち長崎市は先述の通り「情報提供」に予算の半分を投じていて、他の自治体と比べると情報発信への比重が非常に高いのが特徴です。情報発信自体は重要ですが、それが交流人口の増加や観光消費拡大に実際に結びついているかどうかは、しっかりとした検証が必要だと思います。

長崎市は宿泊税制度の見直しを3年ごとに行うとしていて、今年度中に税額の見直しも含めた検討を進めるとしていますが、現状の宿泊税の運用については市内の宿泊事業者からも疑問の声が聞かれました。