服用開始すると…

北教授らは、「慢性疲労症候群」の患者に5-ALAと鉄を組み合わせた「5-ALA/SFC(5-アミノレブリン酸/クエン酸第一鉄ナトリウム)」の機能性食品の服用を開始してもらった。その結果、自宅から出ることすら困難だった女性は次第に回復傾向を示し、北教授のオフィスまでお礼を伝えに来るまでになった。

その後患者は長崎大学病院に移った。主治医は長崎大学大学院医師薬学総合研究科 先進予防医学共同専攻リウマチ・膠原病内科学部分野の古賀智裕講師。

発表によると、「5-ALA/SFC」と、体のエネルギー生産を助ける医療用医薬品「ユビキノン」の服用で症状は大幅に改善。治療を受けた女性患者は、以前は外出すら困難だったが、現在は買い物や友人との外出も可能になるなど、日常生活の質が大幅に向上したという。

【疲労感評価スケール】
治療前:「3点」→4年後:「19点」

研究チームは治療の中で、「5-ALA/SFC」の量を減らすと症状が悪化し、再び増量すると改善することも確認。5-ALAが慢性疲労症候群に「確かに効果を発揮していることが分かった」としている。

発見!遺伝子の変化

さらに研究チームは長崎大学原爆後障害医療研究所 人類遺伝学研究分野の吉浦孝一郎教授との共同研究から、慢性疲労症候群の患者の遺伝子に1文字分の‟欠け”があることを発見した。この遺伝子の変化によって、「エネルギー工場」であるミトコンドリアの働きを支えるタンパク質がうまく作られなくなり、疲れやすさにつながっていることが考えられるとしている。

今後への期待

これまで「原因不明」とされていた慢性的な疲れの仕組み。長崎大学の研究チームは「病気の解明と治療に新しい道を開くもの」としている。

研究結果は、国際学術誌「ImmunologicalMedicine」に掲載され、世界的な注目を集めている。