「ずっと疲れが取れない…」そんな症状に悩む人たちがいる。原因が分かっていない「慢性疲労症候群」だ。長崎大学の研究チ-ムは慢性疲労症候群の患者の研究で、疲れの原因となる‟遺伝子の変化”を発見したと発表した。さらに、ミトコンドリアの働きを助ける「5-ALA」を用いた新しい治療法で、症状が大幅に改善することを確認した。5-ALAは抗マラリア薬などとしても研究が進んでいる天然のアミノ酸で、新型コロナウイルスの増殖を細胞レベルで抑制したことも確認されている。

慢性疲労症候群とは?

「慢性疲労症候群」は健康に生活していた人が、ある日突然強い疲労感に襲われる病気だ。微熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、思考力の低下などの症状が長期間続く。詳しい発症原因は解明されておらず、確立された治療法もない。多くの患者が「怠けている」などの誤解や偏見に苦しんでいるのが現状だ。

長崎大学の新たな発見

きっかけは、ある教員からの相談だった。「知人の体調が悪く、仕事も辞めてしまった」。知人は市内の病院に通う30代の女性。長崎大学大学院熱帯医学・グロ-バルヘルス研究科の北潔教授はその症状から、「ミトコンドリア機能の低下が原因ではないか?」と考えた。北教授はミトコンドリアを活性化するアミノ酸、「5-ALA」研究の第一人者だ。

「5-ALA」とは?

コロナ後遺症改善《5-ALA》でも「製薬企業は見向きもしない…」研究者の苦悩|TBS NEWS DIG

5-ALA(5-アミノレブリン酸)は、天然のアミノ酸だ。私たちの体の中で日々作られ、食品中にも含まれており、エネルギ-の工場である「ミトコンドリア」の活性に不可欠な役割を担っている。

北教授らのチームは、5-ALAが世界3大感染症のひとつ「マラリア」の病原体マラリア原虫の増殖を抑えることを発見し「マラリア治療薬」として研究開発を進めている。

さらに、5-ALAが「新型コロナウイルス」の増殖を試験管レベルで完全に抑制することも確認し、感染者の咳や味覚障害、後遺症の疲労感の改善にも効果がある可能性を示した。

ALAが効果を発揮するメカニズムは複数があるが、そのひとつは、ミトコンドリアの活性化と考えられている。