核攻撃の可能性を示唆しているロシアがウクライナ侵攻を続ける中、世界の核軍縮などについて議論するNPT再検討会議が開幕しました。
日本の首相として初めて出席した岸田総理は「長崎を最後の被爆地にしなければならない」と訴えました。

NPT=核拡散防止条約は、国際社会の ほとんどとなる191の国と地域が参加する国際規範で、過去の合意の履行状況を点検するため、5年に一度、再検討会議が開かれます。

10回目となる今回は冒頭、グテーレス国連事務総長が、ロシアのウクライナ侵攻などを念頭に「人類は広島・長崎の教訓を忘れつつある。核の脅威は冷戦のピーク並みだ」と危機感を示しました。

岸田総理:「私は1羽の折り鶴を折って、ここに持って参りました」
日本の総理として初めて会議に出席した岸田総理は、赤い折り鶴を手に演説し、ロシアが核の威嚇を行う今こそ「NPT体制の強化が重要だ」と訴えました。
岸田総理は理想と現実を結び付けるロードマップとして『ヒロシマ・アクション・プラン』を示し、核保有国に核戦力の透明化を求めていくほか、世界の若者を広島、長崎に招くため1,000万ドルを拠出し『新たな基金』を創設すると発表しました。
また ”核兵器不使用の継続” を訴え「長崎を最後の被爆地にしなければならない」と述べました。『核兵器禁止条約』には言及しませんでした。

岸田総理:「長崎を最後の被爆地にしなければなりません」

一方、日本と同様、アメリカの核に依存しているドイツのベアボック外務大臣は「NPTの二極化を克服するために、核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバーとして参加した」と発言。

また先月、長崎市を訪れ被爆者と面会したことに触れ「二度と核兵器を使ってはならないという願いに少しでも近づく事はあらゆる努力に値する」と述べました。

長崎被災協・田中重光会長:
「本当に敬意を表します。そこなんですよ。心から核兵器を無くさないといけないと思ってるのかどうか」
先月、ベアボック大臣と面会した被爆者の田中 重光さん。
ドイツの発言に敬意を表す一方で、核兵器廃絶を明確に訴えなかった岸田総理に不満を示しています。
長崎被災協・田中重光会長:
「私たち、被爆者が言っている ”核兵器を廃絶せよ” という言葉がないもんね」

一方、ロシアのプーチン大統領は、開幕によせて「核戦争に勝者はいない」
ロシアはNPT締約国として「一貫して条約とその精神を守ってきた」とするメッセージを送っています。
会議は今月26日までで、5日には田上長崎市長が演説する予定です。