大ヒット公開中の映画「すずめの戸締まり」、物語の始まりは宮崎とされています。
MRTテレビ「Check!」では、新海 誠監督に単独インタビューする機会をいただきました。
公開から2か月、今の思いや宮崎が舞台になった理由、制作秘話を澁谷祐太朗アナウンサーが伺いました。

「君の名は。」、「天気の子」を手がけた新海誠監督の最新作「すずめの戸締り」。
公開から2ヶ月、興行収入は113億円を突破し、観客動員数は約850万人を記録するなど大ヒットしています。

「すずめの戸締まり」は、日本各地の廃墟を舞台に、主人公の少女・鈴芽(すずめ)が災いの元となる扉を閉めていく物語。
次々と扉が開き始め、九州、四国、関西、そして東京と進んでいく鈴芽の「戸締りの旅」。その始まりの舞台が宮崎と言われています。

公開から2か月 心境の変化、周りの反応は?

澁谷祐太朗アナウンサー(以下、澁谷AN)
公開から2か月が経って、心境の変化、周りの反応というものはいかがですか?

新海 誠監督
「見たよ」という声がたくさん届いてきて、「ありがたいな、嬉しいな」というふうに思っております。
ただ、気持ちとしては、「なかなか、まだ落ち着いておらず」ですね。
毎回そうなのですけれども、やはり、作ってるときの方が「早く見てほしい」と思っていて、完成してしまうと「これでよかったのかな」というふうに、しばらく考え続けてしまうような、そういう日々です。

ストーリーのアイデアはどこから?

澁谷AN
私も公開されてすぐ拝見したのですが、その独自の世界観、壮大な映像美、そういったところで本当に没頭をしました。
今回のストーリーのアイディアはどういったところから得たのでしょうか?

新海 誠監督
ひとつには、「場所を悼むような物語ができるのではないか」というふうに思いました。人のいなくなってしまった場所を、慰霊しながら回る旅をする物語が作れないかなというふうに思いました。
いまの日本を舞台に何か物語を書こうと思ったときに、人がいなくなってしまった場所というのがこの先増えていくのだから、そこを舞台に冒険物語を作ることができないだろうかと考えたのが映画作りの最初でした。

宮崎を始まりの舞台にした理由は?

そして、やはり気になるのは、始まりの舞台について。

澁谷AN
宮崎県民とすると、宮崎かなという場面も数多くあったんですが、宮崎を舞台にされたのは何か理由とか思いがあったのですか。

新海 誠監督
鈴芽が日本列島を旅していく話にしたいと思ったので、スタート地点は西の端の方にしたいなというふうに思いました。
沖縄とか、鹿児島とか熊本とか、場所はいくつか候補はあったんですけれども、最終的に宮崎としたのは、宮崎が日本神話のふるさとのような場所だからです。
主人公の鈴芽というキャラクターは、天岩戸伝説の天岩戸が一つのモチーフになっています。ですので、宮崎がふさわしいかなというふうに考えました。

映画の中で描かれていた「震災」について

澁谷AN
このテーマ(震災)を扱うにあたって、お考え、思いというのはどういったものがありましたか

新海 誠監督
2016年に「君の名は。」と映画を出したときからずっと同じことを、同じこと、似たようなことをずっと考えながら映画を作ってきて、今回、「すずめの戸締まり」にたどり着いたような気がします。
「君の名は」は1000年に一度、彗星が訪れるという物語を作りましたが、1000年に一度やってくる彗星というのは、1000年に一度の巨大地震であった東日本大震災のことをイメージしていて、そのメタファーとしてあの映画を描いていました。
「君の名は。」を出したときに観客の方々のいろんな声が届いて、「よかった」という声もあれば、「あったはずのことを、時間をさかのぼってなかったことにする映画だ」という厳しいご批判もたくさんいただいたりして、それを受けて、今度こそもっとまっすぐ観客に届くような映画、もっと力に満ちたような映画を作りたいというふうに思ってたどり着いたのが「すずめの戸締まり」です。

「いってきます」に込められた思い

澁谷AN
「すずめの戸締まり」の中で、「いってきます」、この言葉がすごく印象的だったのですが、この言葉に新海監督が込めた思いはありましたか?

新海 誠監督
この映画の中はたくさんの「いってきます」であったりとか、あるいは「いただきます」とか「おかえりなさい」という言葉がある映画なのですが、「いってきます」には「また帰ってくるよ」という気持ちが込められてるんでしょうし、「いってらっしゃい」という言葉には「無事に帰ってきてね」という言葉が、気持ちが、込められているのでしょうし、そういう、毎日、自分たちが無意識のうちにいろいろな気持ちの交換をし続けていて、実は「得がたい奇跡なんだ」と思います。そういう何気ないシーンの1枚1枚も、奇跡のようにキラキラした美しい絵として描くことができれば、何か気持ちが伝わるかなと思って作っていました。

澁谷AN
私も見た後に「いってきます」「いってらっしゃい」という言葉をすごく大事にしたいと思いました。
新海 誠監督
ありがとうございます。

宮崎のファンに

新海 誠監督
宮崎の皆さん、「すずめの戸締まり」という映画を、いま、公開しております。
この映画は宮崎が出発の舞台になっております。
宮崎の方に見ていただければ、聞いたことのある言葉や、いつも言っている言葉や見たことのあるような景色がたくさんあると思いますので、ぜひ、そういうものを見つけに劇場に足を運んでいただければとても幸せです。どうぞ映画を楽しんでください。よろしくお願いします。

※MRTテレビ「Check!」1月10日(火)放送分から