金沢大学などの共同研究グループが、乳がんの再発原因となる細胞を解明しました。心不全に使われる既存の薬の成分に、再発を抑える効果があるとの研究成果が発表され、新たな乳がん治療に道が開かれました。

乳がんは日本人の女性の9人に1人がかかるとされていて、一般的には抗ガン剤治療が行われています。しかし、再発や転移する可能性が高い「トリプルネガティブ」と呼ばれるタイプの乳がんが一定の割合で存在していて、なぜ、抗がん剤治療で抵抗性を示すがん細胞が残るかは解明されていませんでした。

金沢大学などの研究グループは後藤典子教授が中心となって、2007年からこの再発を引き起こす原因細胞の解明を進め、乳がん患者の検体から採取したがん細胞を培養したり、その細胞をマウスに移殖し遺伝子を解析しました。

その結果、抗がん剤に抵抗性を持つがん細胞が、特定のタンパク質を多く持っていることがわかり、心不全の治療薬を使うことでタンパク質の働きが抑えられ、再発原因となるがん細胞が死滅したということです。

(金沢大学がん進展制御研究所新学術創成研究機構・後藤典子教授)
「術前全身治療の時に強心配糖体(心不全の治療薬)、もしくはFXYD3(特定のタンパク質)に対する標的治療を加えることによって、再発転移がほとんどない効果が、理想的にはこういう風にできるのではないかという事が分かってきた」

後藤教授らの今回の研究成果で、乳がんの再発予防に関する新たな治療法の確立が期待されています。