長年、方言を中心に日本語について研究してきた金沢大学の加藤和夫・名誉教授。
今回は「真逆」がテーマです。
「真逆」という言い方は、いろいろ調べてみると、今世紀に入った2000年頃から使われ始めたようです。新語としての普及時期を考える上で参考になる『現代用語の基礎知識』(自由国民社)には、2007年版で初めて掲載されています。また、2004年の流行語大賞のノミネート語60語の中に「真逆」が入っていて、当時、新語・流行語の扱いを受けていたことが分かります。
国語辞典でも、「俗語」などと断った上で取り上げているものが増えていて、新しい言葉を積極的に採用することで知られる『三省堂国語辞典 第七版』(2014年)では「真逆」を見出し語として立てて、「まったくの逆。正反対。」という意味とともに「2000年以降に広まったことば」との注記があります。
はじめのうちは、『三省堂国語辞典』の注記にもあるように、話し言葉で俗語的に使われることが多かったのですが、最近では「考え方が私とは真逆だ」とか「これまでのものとは真逆の結論」のように、書き言葉での使用例も見かけるようになりました。「逆」であることを強調する場合は、「まったく逆」とか「まるっきり逆」のように副詞を付けて言う言い方が従来からもあったわけですが、同じような意味を簡潔に一語で表せる「真逆」が、インパクトのある表現、省エネ型の省略形を好む若者世代を中心に徐々に受け入れられたものと考えられます。
「朝日新聞」「日本経済新聞」などの新聞の検索システムにも2000年頃から例が見られるとの報告、またテレビ業界でもやはり2000年頃には流行し始めていたとの報告もあります。











