「はい」消え入りそうな声で答えた黒ずくめの男

自宅にインターホンは見当たらなかった。
玄関の扉越しに声をかけると、中から人が歩いてくる気配がした。
ゆっくりと開いた扉の隙間から現れたのは、30代前半に見える細身で猫背の男だった。
黒縁のメガネに、黒色のパーカー、そして黒色のジャージのズボン。
全身を黒で固めたその男こそ、後に死体遺棄容疑で逮捕されることになる結希さんの養父・安達優季容疑者(37)だった。
「結希くんのご家族の方でしょうか?」
私の問いかけに、男は言葉を発さず小さく首を縦に振った。声が極端に小さく、ジェスチャーでしか肯定を読み取れないほどだった。
さらに「父親ですか?」と重ねて尋ねると、彼は一瞬、答えるのをためらうような仕草を見せた。
そして、力のない細い声で「……はい」とだけ言い、視線を地面に落とした。
その後のやり取りの間、彼は一度も私の目を見ることはなかった。
憔悴しきった、こけた頬が印象的だった。














