四国沖の海水温が上昇し、高知県宿毛市の養殖業に大きな影響が出ています。なぜ海水温が上昇しているのか、今後の見通しについて東杜和気象予報士が解説します。

黒潮域の海面水温と平年比(気象庁HPより)

8月以降、四国沖の海面水温はほぼ全域で30℃を超えるようになり、現在は沿岸部でも31℃を上回る所もあります。平年と比べても2.5℃ほど高い状態です。

海の温度が上がり続けている原因は大きく3つあると考えます。1つ目は、今年が暖冬・暑夏であったことです。

高知市と宿毛市の今年の月平均気温と平年値

今年の月別平均気温を平年値と比べると、冬場の1月と2月、夏場の7月8月上旬は平年よりかなり高い気温となりました。大気と海は触れ合っており、気温の高さは海に伝わるため、気温が高くなると、海面水温も高くなります。

また、特に夏場は高知県内全域で雨が極端に少なく、晴れた日が多くなったため、気温とともに海面水温が高くなりました。

2つ目は、今年は台風が四国に接近していないことです。台風は海上に発生する巨大な渦なので、海水をかき混ぜ海面水温を下げる効果があります。海の少し深い所までかき混ぜるので、冷たい海水が表面まで到達し、海面水温が下がります。今年は台風が9つ発生しているものの四国に接近した台風はなく、海水はかき混ぜられていないため海面水温の上昇が続いている状態です。

3つ目は、黒潮が四国沖で北に蛇行していることです。暖流である黒潮が北に蛇行すると、南の海の暖かい海水が流れ込むため、海水温が上がります。一方で黒潮が南に蛇行すると、蛇行した北側では深海から冷たい海水が湧いてくるため、海水温が下がります(東海道沖では周辺と比べると水温が低くなっている)。四国沖では最も海水温が高くなる夏に黒潮が北に蛇行しているため、より水温が高くなってしまいました。