東日本大震災からまもなく13年です。今年は元日に能登半島地震が発生し、被災した人たちの中には今なお、復興の道筋が見出せない人もいます。からふるでは今週「つなぐ、つながる」と題して能登半島地震の教訓と南海トラフ地震対策について考えます。

3日のテーマは、「空からの救援」です。国道の寸断や地盤の隆起で支援に遅れも生じた能登半島地震。孤立集落も出る中、ドローンを使った被災者支援に注目が集まりました。ドローン救援の可能性と課題について高知県内の状況を取材しました。

(能登半島地震 MRO報道フロア)
「立てないぐらい揺れてる、あぶない!あぶない!」

マグニチュード7.6を記録した能登半島地震。建物の倒壊を中心に、多くの犠牲者が出ました。

この地震で主要道路の崩壊、液状化、そして地盤の隆起などにより災害支援ルートが寸断。陸と海からの支援ができなくなり、能登半島は、救援困難な「孤島」となってしまいました。そんな中、新たな取り組みで注目を集めたのが、「ドローンによる救援物資」の輸送でした。

(日本UAS産業振興協議会 嶋本学 参与)
「孤立化した地域の避難所で薬が足りないということなので薬を迅速にドローンだと運べますので」

実際の災害時にドローンで物資を届ける試みは、国内で初めてだといいます。

およそ3万3千人が暮らす高知県香南市。能登半島と似た、山と海に囲まれた地形で、南海トラフ地震では最大15メートルの津波浸水が想定されます。

現在、23基の津波避難タワーの建設が進んでいて、避難経路の呼びかけや住民が避難した際の準備を進めています。

(香南市職員)
「こちら、市の方で水、ビスケット、トイレ等を備蓄しています」

しかし、道路が寸断された場合、孤立した津波避難タワーにどのように物資を届けるのかは、変わらぬ課題です。香南市では2022年、ドローンを活用する事業者と協定を結びました。内容は「ドローンを使った物資の輸送」「被災状況の把握」「行方不明者の捜索」などです。

(香南市 濱田豪太 市長)
「(ドローンは)機動力が高く、離着陸のスペースも必要ないということで非常に効果的であると考えているし、何が起こっているかということも調べられるという事で協定を結んだ」

(ドロニクスデザイン 松村真吾 代表)
「これは孤立した人達の飲料、医薬品最大では(物資)16キロまで搭載能力があります」

香南市とドローン協定を結んだ「ドロニクスデザイン」の松村真吾(まつむらしんご)代表です。松村さんは元・陸上自衛隊のヘリコプターのパイロットで、2011年の東日本大震災や2014年の御嶽山噴火などの災害現場に出動した経験があります。退官して地元高知に戻り、起業。ヘリコプターではなくドローンで地域に貢献します。

(ドロニクスデザイン 松村真吾 代表)
「自衛隊でヘリコプターの操縦士を務めていましたが、外からなかなか救いの手が足りない、時間的にも間に合わないという中でそもそもこの地域内でそういった自助共助のプレイヤーとして活躍できるようなそんな存在になれたらいいなと思っています」

具体的なドローンの活用方法として香南市が構築したのが、薬を届ける仕組みです。市は、野市中央病院と、隣接するアイン薬局と協定を結び医師や薬事コーディネーターの連携や災害時の薬剤の提供を受けられるようにしました。病院と薬局そしてドローン業者を結ぶことで津波避難タワーへの支援を行います。

(アインファーマシーズ四国支店高知営業所 田村純也 課長)
「有事の際は地域貢献という意味で必要な所に必要な物と人を供給できるように態勢を整備していきたいと考えています」

香南市がドローンを使った救援体制の構築に力を入れてきた背景には、過去の災害で起きた、被災者の孤立という苦い経験がありました。

(香南市防災対策課 中岡俊雄 課長補佐)
「平成30年の7月の豪雨(西日本豪雨)では大きく4つの地域で孤立が発生しました。ここでいうと別役の橋が壊れてそれぞれの林道も壊れ孤立をした」

2018年7月の西日本豪雨では、山間部で4つの地域が孤立。被害状況の把握、救助救援の遅れとなりました。この時の原因もやはり、支援ルートの寸断でした。

(香南市防災対策課 中岡俊雄 課長補佐)
「自衛隊、消防、市役所職員が徒歩でいって安否を確認する。医薬品とか水とかいろんな物をもっていたわけで、人が入れない所でもドローンならいけるとすごいその時は期待を感じました」

孤立集落へのドローンでの支援に大きな期待が集まる中ドロニクスデザインの松村さんは課題もあるといいます。

(ドロニクスデザイン 松村真吾 代表)
「発災後72時間の壁というのをいわれると思うんですけど、そんな中で被災者のもとに必要な援助、救助をするという中ではやはり通信が一つ大事になってきます」

地震による被害を受けた場合既存の通信インフラが不通となりドローンの飛行が困難になります。香南市では、地域独自の無線通信を引くことでローカルネットワークの構築を進めています。これが進み、ドローンとの連携が図れれば、孤立集落での被害確認や物資の輸送などがさらにスムーズになると松村さんは話します。

(香南市 濱田豪太 市長)
「独自に通信網というのを今、作り上げている。技術的には一定あるのですがいま、その運用の実証実験を昨年の防災訓練でも致しましたし、これからそれをさらに磨き上げていく。極力、今ある点と点を結び合わせる作業というのをこれから本市として進めていきたいと考えております」

南海トラフ地震で甚大な被害が想定される高知県。能登半島地震の教訓をいかすためにも、いま「空の道」をどう整備するのかが問われています。