竹林で出産したわが子を見た被告は…
「今回の事件の妊娠、誰にも相談していないのはなぜ?」
「(沈黙)」
「相談せず、お腹は大きくなっていく。どういうことを考えていた?」
「(首をかしげる)」
手元の資料をめくる弁護士。
「どこかで子どもを産んで、放置することを考え始めたのはいつ?」
「産まれる数日前に」
「子どもを放置して死なせてしまってもいいと思ったのはいつ?」
「(沈黙)」
質問は、いよいよ事件の当日に及ぶ。
「竹林で産もうと思ったのはいつ?」
「当日」
「子どもを包んだバスタオルはいつ手に取ったの?」
「竹林に行くときに」
「子どもを置いて立ち去るということは決めていた?」
「そこまでは決めていない」
「結局、放置しているのはなぜ?『溝の中は竹林の外から見えないと思い、放置して立ち去りました』と調書にはあるが」
「気付いたら立ち去っていました…」

そして「殺意」についての質問を重ねる。
「殺すつもりは無かったということ?」
「(沈黙)」
「竹やぶに行って出産したあと、立ち去っているよね。死んでしまうということが分からなかった?」
「(沈黙)」
A女被告(当時)から「殺意」を明確に否定する言葉が出ることは無かった。
「産み落とした赤ちゃんは、動いていましたか?」
「手足は動いていた」
「見てどう思った?」
「(沈黙)」
「…赤ちゃんの顔は見ましたか?」
「ちょっとだけ」
「どう思いましたか?」
「…可愛いなと思いました」
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第3回(前編・中編・後編のうち後編)は、法廷に立った精神科医と「赤ちゃんポスト」を運営する産婦人科医が語ったことを振り返る。そして、裁判の結末は-
【後編の記事はこちら】
【後編】「どういった気持ちで名付けたの」の問いに、泣き出し止まらぬ嗚咽…母親に赤ちゃんを遺棄させたのは障がいか、家庭環境か、社会か…