「声を聞くのが嫌だったので、声帯のある首を徹底的に狙った」
母親に手をかけた理由について問われた男は、その声を聞くことが嫌だったと明らかにした。
「刺している間、母の声を聞きたくなかった」
「支配されたくない、勘弁してくれ、黙っておいてくれ、喋らないでくれと思った」
「息の根を止めなければ、反撃される」
「蘇生するかもしれない、そうなったら地獄の始まりだ」
精神病院 一生退院できなくなる
その事件が発生したのは、さかのぼること1年あまり、2025年4月2日のことだった。
保健所と電話をしていた母親の田中弘子さん(当時80歳)が白昼、息子の洋介被告からガラス製の花瓶の殴られた上、ペティナイフで刺されて殺害されたのだ。

「また精神病院に入院させられてしまい一生退院できなくなる」
「早く電話を止めなければ」
鬼気迫る思いに駆られた洋介被告は、母親を何度も殴りつけた上で、合わせて28回、ナイフが折れるまで、その身体を突き刺し続けた。
およそ四半世紀前の2000年に、統合失調症と診断された洋介被告。
40年近く続いた2人暮らしの中で、親子の関係性は、次第に猜疑心を帯びていく。
逃れることのできない「妄想」による支配の連続、曖昧になっていく「母親の愛情と支配」の境界線。
破滅的で最悪の最期を迎えるに至った顛末。
裁判を通じて明らかになった数々の真実は「老障介護」の厳しい現実、そして社会的なフォローの限界を突き付けた。








